2014 Fiscal Year Annual Research Report
心不全を誘導する筋小胞体Ca制御異常のメカニズムとシグマー1受容体の役割の検討
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14J05570
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
篠田 康晴 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | シグマ1受容体 / 心不全 / ミトコンドリア / ATP |
Outline of Annual Research Achievements |
心不全病態におけるシグマ1受容体の関与について検討するため、シグマ1受容体アンタゴニストであるハロペリドールを用いた動物実験を行った。横行大動脈結紮術(TAC)を施した心肥大・心不全病態モデルマウスに術後2日目から2週間ハロペリドール慢性経口投与を行った結果、心機能の低下を引き起こした。また、さらに2週間投与を続け生存率を検討した結果、ハロペリドールを投与したTACマウス群において生存率が優位に低下した。一方、偽手術群においてはこれらのような作用は見られなかった。これらの結果より、ハロペリドールがTACマウスの心不全病態を悪化させることが明らかとなった。また、ハロペリドールを投与したTACマウスの左心室において、シグマ1受容体の発現量の低下およびATP産生の低下が観察された。さらに、ハロペリドールと同時にミトコンドリアTCA回路中の器質であるピルビン酸Naを併用投与したTACマウスにおいて、左心室におけるATP産生低下、心機能および生存率の低下が有意に改善された。一方、ラットより単離した初代培養心筋細胞において、2日間のハロペリドール処置は細胞の肥大、ミトコンドリアのカルシウム輸送異常や蛋白質の分解、細胞死を誘導した。これらの作用は、内因性心肥大促進因子として知られるアンギオテンシンII(AngII)存在下においてより顕著であった。さらにAngII・ハロペリドール共処置時にのみシグマ1受容体発現量の低下が観察された。以上の結果より、ハロペリドールによるシグマ1受容体の阻害は、ミトコンドリア障害やATP産生の低下を介しTACマウスの心不全病態を増悪することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、ハロペリドールによるシグマ1受容体の阻害がミトコンドリアATP産生の低下を引き起こすことで、モデル動物の病態進行を亢進することを明らかとすることができた。また同時に、ピルビン酸ナトリウムの併用投与により、ATP産生低下および病態の進行促進を改善することを明らかとした。心不全病態におけるシグマ1受容体の役割を明らかにすることが本研究の主題であり、これらの結果は極めて興味深いものである。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子欠損マウスを用いたモデル動物作製等により、心臓におけるシグマ1受容体の心肥大・心不全病態での役割についてより詳細な検討が必要である。
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Research Products
(3 results)