2014 Fiscal Year Annual Research Report
限界変形に注目した空間構造の耐震性能評価手法の提案
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14J05623
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
柳澤 利昌 豊橋技術科学大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 空間構造 / 耐震性能評価 / 単層ラチスドーム / 地震荷重 / 時刻歴地震応答解析 / プッシュオーバー解析 / 動的靱性指標 / 動的構造耐震指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
空間構造はビルなどの層状の構造物(重層構造)とは地震時の挙動が異なる.そのため,ビルなどの重層構造を対象としている現行の設計基準を用いて空間構造の耐震設計を行うことは困難である.そこで,本研究ではFEM解析に基づいて空間構造の動的挙動および塑性後の性状を把握し,空間構造の耐震性能評価法を提案している. これまでに空間構造として比較的規模の小さい学校体育館と規模の大きい単層ラチスドームを対象として評価法の提案を行ってきた.学校体育館を対象とした評価法についてはすでに査読付き論文(日本建築学会構造系論文集)として発表されている.2014年度では単層ラチスドームを対象とした評価法に関する研究を進めてきた.単層ラチスドームは地震時に複雑な挙動を示すため,耐震設計で必要となる地震荷重を作成することが困難であった.そこで,本研究では時刻歴地震応答解析に基づいて,単層ラチスドームの応答性状を分析し,一般の設計者でも簡易に使用することができる地震荷重を作成した.なお,提案した地震荷重はプッシュオーバー解析から地震時の初期降伏耐力を推定することが可能であるため,設計でも使用できる非常に実用的な成果となった.また,弾塑性解析に基づいて塑性後の性状および耐力を明らかにした.さらに,損傷評価を行えるように,部材の限界変形と動的耐力の関係から既往の研究で提案されている動的靱性指標を算出し,その推定式を示した.最後に,得られた結果に基づいた耐震性能評価法を提案し,その有用性を確認した.なお,これらの研究成果は国際会議(The International Association for Shell and Spatial Structures)で発表され,査読付き論文(日本建築学会構造系論文集)としても発表されている.2015年度でも西安やアムステルダムにて国際会議での発表を予定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在,部材の限界変形に着目した単層ラチスドーム等の空間構造の耐震性能評価に関する研究を遂行した.具体的には,①スパンに対する等価シェル厚が極めて薄い単層ラチスドームに対する地震荷重の提案,②提案した地震荷重を用いた当該構造物の耐震性能評価手法の提案を行い,③FEMに基づく数値解析を用いて本手法の妥当性の検討を行った. これらの研究成果の一部は日本建築学会構造系論文集(査読付き論文)1編として公開されており,国際シェル空間構造学会(The international Association for Shell and Spatial Structures)の国際会議においても口頭発表を行っている.また,これまで継続してきた博士課程での研究成果と本年度の研究成果から博士学位論文をまとめ,2015年3月に豊橋技術科学大学にて博士(工学)の学位を修得している.博士論文では既往の研究成果も踏まえて空間構造を対象とした耐震性能評価フローを示し,その使用方法を説明している.本研究で示した内容は学校体育館と単層ラチスドームの2種類であるが,その他の構造形式(円筒,HPなど)についても同様に研究を進めることにより,提案した評価フローに組み込むことが可能であると考えられる.以上を鑑み,期待通り研究が進展したと評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,比較的規模の小さい学校体育館と規模の大きい単層ラチスドームを対象とした耐震性能評価手法を示し,設計時に有用となる研究成果を得ることができた.しかし,本評価手法はプッシュオーバー解析を基本としているため,時刻歴解析の手間は省けたものの非線形解析が必要となり,一部の設計者にとっては未だ敷居が高くなっている.また,設計時は解析精度や材料特性のばらつきなどを考慮して安全率が設定されるが,空間構造の耐震設計を行う場合の値についてはほとんど議論が進められていないため,設計体系を構築するためには課題がいくつか残されている.そこで,今後は空間構造の設計体系を構築するために次の二点について検討を進める. 一つ目は,一般の設計者でも簡易に耐震性能を評価できるように,手計算による耐震性能評価手法の提案を行う.解決にあたり,まず,シェル理論を援用して固定荷重と地震荷重を受ける単層ラチスドームの線形座屈荷重の推定式を示し,FEM解析の結果と比較検討する.次に,形状初期不整量を解析パラメータとして弾性座屈解析および弾塑性座屈解析から座屈耐力を算出し,初期不整敏感性について検討する.そして,空間構造の圧縮強度曲線として使用されている修正ダンカレー式と比較し,その妥当性を確認する.最後に修正ダンカレー式に基づいて算出された座屈耐力と昨年度提案した単層ラチスドームの動的靱性指標を用いて地震時の耐力を手計算から算出する方法を示す. 二つ目は,信頼性解析に基づいて荷重係数(安全率)と破壊確率の関係を明らかにする.解決にあたり,まず,確率変数の平均値および変動係数のデータを既往の文献から収集する.次に,耐力に修正ダンカレー式,外力に昨年度提案した地震荷重を用いて信頼性解析を行うための性能関数を示す.最後に,荷重係数をパラメータとして設計された単層ラチスドームの破壊確率を算出し,設計時の目安となる値を示す.
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Research Products
(2 results)