2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J05697
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 信康 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 自己免疫疾患 / I型インターフェロン / ncRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
発表前のAIP1欠損マウスを他の研究者から入手できることになり、繁殖を進めている。提供者の情報からAIP欠損個体が胎生致死であること、ヘテロ接合体マウスも骨格発達異常を示すということも判明した。これはAIP1の生体での重要性を示唆する結果であり、大変興味深い。また、AIP1リコンビナントタンパク質の作製も完了し、引き続き解析を推進する予定である。 外来性だけでなく内在性核酸に対する応答におけるAIP1の重要性の解析を試みた。AIP1をノックダウンした細胞の死細胞は免疫性が低下することが判明しており、AIP1が死細胞から放出される内在性核酸の免疫性を制御している可能性が示唆される。別の検討でNAIC-001の結合核酸が同定されていたため、その中からAIP1に結合する核酸を探索した。その結果、I型インターフェロンを強力に誘導するノンコーディングRNA(ncRNA)を同定した。その遺伝子誘導レベルはTLR7のリガンドである一本鎖RNAであるpolyUと比較して10倍程度である一方で、他の炎症性サイトカインmRNAの誘導レベルはpolyUと同程度であった。以上より、このncRNAは未知の機構によってI型IFNを誘導するシグナルを特異的に活性化することが示唆された。また、このncRNAによって惹起される免疫応答はNAIC-001による強力に抑制されることも確認され、NAIC-001の標的核酸であることが示唆された。さらに我々の同定した当該ncRNA; AIR(AutoImmune ncRNA:仮称)1のin vivoでの免疫賦活作用解析するため、AIR1をin vitro転写により合成してマウスに投与したところ、IgG2aの産生を強力に誘導した。IgG2aは自己免疫の増悪に関与するサブタイプであり、I型IFNがその産生を亢進させることも知られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
AIP1欠損マウスの入手が予定よりも早く可能になったため、siRNAを用いた検討は一旦保留としたが、順調にマウスの繁殖が進められており、さらにリコンビナントタンパク質の作製など解析の準備が整いつつある。 さらに当初の予定にはなかったが、解析を進める中でAIP1に結合する内在性の核酸に非常に興味深い結果が得られている。AIP1はもともと細胞内で核酸と複合体を作ることがわかっていたが、その一つに非常に強い免疫性があるという結果は全く予想していなかった結果である。すなわち、細胞内の免疫応答を強力に活性化しうる特定のnon-coding RNA (ncRNA)が、細胞死にともなって放出されることで、様々な免疫疾患(自己免疫疾患や炎症性疾患)の引き金になっている可能性がある。この結果はNAIC-001の治療効果とも一致するものであり、応用の観点からも非常に重要な意味をもっていると考えられる。一方で、別の観点では、この核酸の免疫性の分子機構が解明されれば、強力なアジュバントの開発にもつながる。 このように、本課題は当初の予定にはない非常に興味深い分子の発見に成功し、予想以上の成果を上げており、今後の大きな発展が期待される。そのため、今後は発見したncRNAの重要性を十分に考慮し、さらに検討結果を吟味しながら、臨機応変に計画を変更などし、精力的に推進して行く。
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Strategy for Future Research Activity |
内在性免疫性核酸のうちで実態が特定されているものは非常に少なく、ncRNAの一種であるU1snRNAやある種のmiRNA等がTLRに認識されるとの報告があるが。これらについても、その免疫性賦活化作用の報告があるのみで、生理的な重要性は全く分かっていない。既知の報告中で、U1snRNAはpolyUの半分ほどの免疫性しか示さないことが分かっているが、そのような報告を考慮してもAIR1が如何に強い免疫性を持っているかが推測できる。強力な免疫性を発揮する内在性の核酸としては、AIR1が世界で初めての核酸であると言っても過言ではない。また、NAIC-001で抑制することで、CIAの病態を抑えられることも分かっているため、生理的にも非常に重要な役割を果たしていると考えられる。そのためAIR1は当初の予定を大幅に変更してでも、解析をする価値のある非常に興味深いncRNAだと考えている。 今後は得られた結果を吟味しながら当初予定した検討とのエフォートの配分を適切に調節しつつ、AIR1投与が自己免疫疾患の発症・増悪の各段階において如何に関与するのか詳細に解析を行う。一方で、AIR1によるI型IFN誘導の分子機構の解析を進める。また、AIR1トランスジェニックマウスの作製も進めており、AIR1の生体における重要性、特に自己免疫疾患における役割について検討を進める予定である。
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