2014 Fiscal Year Annual Research Report
国際人を目指す小学校社会科教育の実証研究-米日韓の授業観察・比較を通して
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14J05712
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
金 寶美 広島大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 社会科授業コミュニケーションの類型 / 質的授業研究 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、米・日・韓の小学校における社会科授業を観察し、国際人の育成を求めている現在の社会科教育が、子どもの見方や考え方に与える影響を明らかにし、諸要素を基に改善案を提案することが目的である。 そのため、2014年には韓日小学校の社会科授業を観察し、子どもたちの学習状況及び結果の比較を基に現在の社会科教育が子どもの見方や考え方に与える影響を明らかにしようとした。両国のカリキュラムにおいて6年社会科の後期(日本の場合は3学期)に扱われている同主題(国際理解単元)の授業を小学校4か所(韓国のヨンワル小学校、ゲサン小学校と日本の広島大学付属小学校、明郷小学校)で観察し、質的研究方法(子どもと教師のインタビュー、VTRで授業録画、ワークシ-トの比較分析)を活用して学習の影響や結果を解釈した。観察対象の授業はその流れによって、子どもたちが‘世界に関して考える’授業と‘世界に関する情報を知る’授業に分けることができる。そして、子どもの見方・考え方は世界に関して悩んで考える授業の過程を通して変わり始まることが見つけられた。 その一部をまとめたのが『広島大学教育学紀要』に乗せている「子どもの思考変容に基づく社会科授業コミュニケーションの類型研究」の論文である。この論文では、子どもの見方・考え方が成長できる社会科授業の特徴を考察し、授業過程のコミュニケーション構造を基に社会科教育の改善を述べた。また、多様なセミナ・Colloquiumに参加し、日韓の社会科授業の現状や示唆を議論することによって研究改善の方向へつながる多様な手がかりを見つけることもできた。しかし、小学校4ヶ所だけでは、研究を進むことに限界があるため、韓国の小学校3か所(ドンシン初等学校・花倉初等学校・山北初等学校)で授業観察の交渉を行い、今年夏・冬休みの実施される特別授業を研究対象にする許可をもらっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、現在の韓日米における社会科授業を通して子どもが獲得している見方や考え方の実態を収集し、質的研究方法を通じて比較することでその諸要素を解明しようとしている。国際化やグロ-バル化など国際理解教育のスロ-ガンの基に、時代の変化に対応する市民を育てる教育の必要性を述べた研究は多い。とは言うものの、各国の自然・文化・社会制度の面では様々な比較が成されてきたが、授業のような教育の具体的な状況に関する比較研究は極めて少ない。2014年度、本研究で分析した授業は各国の教育実態にもっとも密着しているデータなので、韓日における社会科教育の現状に関する理解を深くして、より望ましい改善案を提案することができた。 研究方法の側面では、SECIプロセス(野中郁次郎、1995)を応用して各国の小学校社会科授業をCase Studyとして分析・解釈した。このツールは企業経営におけるアイデア開発のため利用されたもので、会話(聞き合い・話し合い)を通じて人々の考えが変化する過程を観察・分析することができるものである。このようなSECIプロセスの特徴を用いて‘授業状況’を読み取り、質的な分析を行う方法として活用するのは、韓日教科教育研究分野の中で本研究が最初である。なお、去年の研究対象である4か所の小学校に加えて、既に授業観察の許可をもらっている3か所の小学校まで広げてデータを分析する過程を通じて、新しい研究方法としての整合性・普遍性が確保できると考えられる。このような点で見ると、今後の授業研究分野において質的研究方法として多様に活用されることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年、ユネスコの教育アゼンダとしてESD(持続可能な教育)が終わってGCED(グロバール市民性教育)へ変化することが決まった。新しいアゼンダとして‘GCED’が採択された直後、現状況を把握してその方向性を探るためのセミナ・研究会が次々開かれている。 ユネスコが主張しているGCEDは、本研究の主なテーマである‘国際人を目指す小学校社会科教育’と深く関係している。けれども、この新しいアゼンダはスローガンとしての概念的なフレームワークが述べられている段階で、具体的な実践研究・実証研究などはなされていない(これは、2015年03月06日ニューヨーク国連本部で開かれた「2015世界教育フォラムの説明会及びグロバール市民教育セミナ」でも同じ)。そのため、名古屋(11月04日~17日)で開かれたユネスコ世界会議(ESDの成果共有及び2014年以後の教育アゼンダを議論)の後から、新しい教育アゼンダに関する実証研究として本研究の特徴を広報するためアウトリーチ活動に集中してきた。さらに、2015年5月に韓国の仁川で開かれる「2015世界教育フォラム」は‘GCED’を幅広く・深く議論する場になる。そのような議論の先端には‘ユネスコアジア太平洋国際理解教育院’が位置し、国際会議・学術大会・シムポジウムなどを開催している。当機関とはすでに研究交流(2014年11月、2015年01月)を通してネットワークを構築しているので「2015世界教育フォラム」をはじめ、今年に予定されている学会・セミナなどへ参加して情報収集や多様な一般参加者との意見交換を通して研究を深める準備をしている。 なお、授業観察を行う小学校3か所での招待講演及び社会科研究会の参加を通して教育現場を中心にするアウトリーチ活動を行うと共に、研究改善の方向へつながる多様な手がかりを見つけるため努力する。
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Research Products
(3 results)