2014 Fiscal Year Annual Research Report
イネRT98型細胞質雄性不稔性における不稔及び稔性回復機構の分子遺伝学的解析
Project/Area Number |
14J05736
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
五十嵐 圭介 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | 細胞質雄性不稔性 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.A.稔性回復遺伝子Rf98の候補とした, pentatricopeptide repeat (PPR) モチーフを持つ遺伝子8個について, ゲノム断片のクローニングとシークエンスの確認, 細胞質雄性不稔系統RT98Aへの遺伝子導入, 形質転換体の稔性の評価を行った. 8個の遺伝子のうち, PPR762をコードする遺伝子を導入して得られた2個体中1個体で3粒の稔実が確認できた. 弱いながらも確実な稔性回復作用を持つ遺伝子を見出したことに意義があり, RT98型CMSの稔性回復機構解明の起点となるため重要性がある. 2.A.ORF113リコンビナントタンパク質を作製し, 抗ORF113抗体を得ることができた. 作製した抗体はリコンビナントORF113を検出可能であることをウェスタンブロットにより確認できたが, 花粉でのORF113の蓄積は検出できていない. ORF113のタンパク質の蓄積が雄性不稔の原因でない可能性を示した点に意義がある. 2.B.細胞質雄性不稔系統RT98Aと維持系統T65の3核期の葯から抽出したRNAを用いてRNA-seq解析を行った. 両系統間で有意に発現が変動していた遺伝子を1,607個見出した. このうち, RT98Aで発現が増加していたものが1112個, T65で発現が増加していたものが494個であった. ホルモン解析を3核期の葯サンプルについて行った結果, 細胞質雄性不稔系統RT98Aで不足している植物ホルモンは無かったことから, 特定の植物ホルモンの不足はRT98型細胞質雄性不稔性の原因ではないことが示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
稔性回復遺伝子Rf98の同定について, 候補遺伝子のゲノム断片のクローニングおよびRT98Aへの相補性試験を達成した. CMS原因因子の解明について, 抗ORF113抗体の作製を達成できたが, ORF113タンパク質の蓄積の検出が未達成である. 花粉のトランスクリプトーム解析を達成し, 測定結果を解析中である. 花粉のホルモン解析を達成し, 測定結果を解析中である.
|
Strategy for Future Research Activity |
稔性回復遺伝子候補のPPR762を細胞質雄性不稔系統RT98Aへ導入した形質転換体の数が少ないため, RT98AへのPPR762ゲノム断片の形質転換実験を継続する. 細胞質雄性不稔原因遺伝子候補orf113は, 稔性回復系統RT98Cと細胞質雄性不稔系統RT98AのmRNAで異なるバンドパターンが検出される. RT98AにPPR762を導入した形質転換体で, orf113のmRNAがRT98Cと同じバンドパターンに変化しているかどうかをノーザンブロットにより確認する. 細胞質雄性不稔原因因子候補ORF113タンパク質の蓄積をRT98Aで検出できていないことから, 細胞質雄性不稔原因因子候補がORF113の他に存在する可能性を考慮し, それを明らかにするために, RIP-seqによりPPR762が結合するmRNAを同定することにした. そのために, まずはタグを付加したPPR762発現コンストラクトの作製およびRT98Aへの導入, タグ付きPPR762が機能して稔性が回復することを確認する.
|