2014 Fiscal Year Annual Research Report
標準模型を越える素粒子模型が持つべき理論構造の研究
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14J05862
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
柏瀨 翔一 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | インフレーション / ニュートリノ / 暗黒物質 / バリオン数 / 標準模型の拡張 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年のCMB観測の結果はインフレーションの存在を支持しているため、実験・観測的事実であるニュートリノ質量、暗黒物質の存在、宇宙の物質・反物質非対称性と共に標準模型を越える模型構築に向けた重要な手がかりとなる可能性が高い。そこで、ニュートリノ質量、暗黒物質の存在、宇宙の物質・反物質非対称性の同時説明可能な輻射ニュートリノ質量生成模型に注目し、これを拡張してインフレーションの可能性について評価した。このとき、場の値がプランクスケールを越えるような模型では、ポテンシャル中の高次の補正項の寄与が大きくなり、その平坦性が失われるためインフレーションを実現できない。この問題を回避するため、複素スカラー場を導入し、これをインフラトンとする新しい模型を提案した。この模型において、スカラー・テンソル比とスペクトル指数を定量的に求め、CMBの観測結果との整合性について評価した。また、宇宙の再加熱はインフラトンの崩壊によって実現される。インフラトンはニュートリノ質量生成にも重要な役割を担っているため、その制限の下で再加熱温度を評価した。これらの結果を以下に示す。
1.複素スカラー場を用いることで、場の値がプランクスケールを越えることなく、十分な宇宙膨張を実現できることを示した。そのためこの模型では、インフラトンのポテンシャルに関する重大な問題を生じない。 2.この模型が予言するスカラー・テンソル比とスペクトル指数が最新の観測結果と無矛盾であることを示し、それらの間に他の模型と比べて特徴的な関係があることから、将来のCMB観測による検証可能性について評価した。 3.ニュートリノ質量の制限の下、レプトジェネシスに必要な再加熱温度を実現可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニュートリノ質量、暗黒物質の存在、宇宙の物質・反物質非対称性に加え、インフレーションを実現する模型を提案した。この模型はPlanckによる新たなCMB観測結果を満足し、将来の観測による検証が十分期待できる。さらに十分な再加熱温度も実現することができることを示した。この研究成果は、当初の目的の達成度という点からは十分なものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
この模型において、不活性ヒッグスにレプトン数を課すシナリオを検討している。このとき宇宙の物質・反物質非対称性はインフラトンの崩壊によって生成される。今後、その生成量の定量的な解析を進めていく予定である。また、宇宙の再加熱温度はスカラー・テンソル比とスペクトル指数を精密に決定する上で重要であるため、プリヒーティングの効果を含めた再加熱温度の解析も進めていく。
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Research Products
(14 results)