2014 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスにおける国際バカロレア認証による高大アーティキュレーションに関する研究
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14J06000
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
花井 渉 九州大学, 人間環境学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 国際バカロレア / 高大アーティキュレーション / イギリス / 大学入学者選抜制度 / 資格認証 / 教育評価 / 能力認証 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、世界規模で拡大し続けている国際バカロレア(以下:IB)を国内の学習成果と同等に認証するための制度を、イギリスの文脈における国際的な高大アーティキュレーション(高大接続)構造の特質を通じて明らかにすることである。 イギリス(本研究では、イングランド)の高大アーティキュレーションでは、大学と志願者の仲介機関である大学・カレッジ入学サービス機構(以下:UCAS)が重要な位置づけとなっており、2002年より国内における多様な資格を同等に認証するための全国統一能力・資格認証基準、「UCASタリフ」(UCAS Tariff)を作成し、2008年よりIBの認証も行なっている。 しかし、イギリスの5つの大学(総合・研究大学)におけるアドミッション・オフィサーへの現地インタビュー調査を通じて、各大学では独自の認証基準を設定し、統一基準であるUCASタリフは活用されていなかった。その理由としては、大学側のUCASタリフの基準に対する妥当性への疑問があげられていた。この大学独自のIB認証基準の設定方法については、これまで受け入れてきたIB取得生の入学後の学習成果のトラッキングによって蓄積されたデータの収集と分析、他大学との連携による基準の妥当性の確認やIB主催のワークショップに参加等と通じて、行なわれていた。また、このような傾向は、特に「選抜性の高い(selective)大学」において見られており、UCASタリフを利用しているのは、毎年定員割れを起こしているような大学、いわゆる「リクルーティング大学」であるという点が明らかになった。そのため、このIB認証をめぐる基準のデュアル・スタンダードの背景にどのような実態があるのか、またこれら多様な認証基準の質保証が、国家、機関(大学)の各レベルでどのように行なわれているのかについて、今後継続的に研究を進める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の計画として、主に大学のアドミッション・オフィスおよび大学・カレッジ入学サービス機構(UCAS)への現地インタビュー調査を計画していた。大学のアドミッション・オフィスへのインタビューに関しては、5つの大学(総合・研究大学)を訪問し、現状と課題について明らかにすることができた。大学数は、現段階ではまだ少ないため、今年度も継続的にインタビュー調査を実施する。 一方、当初予定していたUCASへのインタビュー調査に関しては、担当者へのアポイントメントが取りにくく、未だ訪問が実現していない。しかし、昨年度イギリスを訪問した際に、UCASへの訪問調査経験者と知り合うことができたため、その研究者の紹介を通じて、UCASへの訪問調査の可能性を探る。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究計画としては、イギリスの高大アーティキュレーション構造のなかで特に重要な位置づけにある「大学・カレッジ入学サービス機構」(UCAS)へのインタビュー調査を行なう。UCASでは、国家的な資格認証基準を設定し、国内の大学進学を目指す多様な学習背景や教育資格を有する志願者の能力認証を行なっている。このなかには、2008年よりIBもイギリスのその他多様な資格とともに同等に認証されている。しかし、平成26年度(昨年度)の現地調査を通じて明らかになったように、イギリスの大学(特に選抜性の高い大学)では、このUCASによる資格認証基準を利用しておらず、大学独自の資格認証基準を設定しており、IBの認証に関しても同様であった。このような実態に対し、UCASではどのような取り組みを行なっているのか、既存の認証基準の見直しをどのように進めていくのか、誰がどのようにこれを推進していくのか等について、インタビュー調査を通じてさらなる検討が必要である。 また、当初の研究計画では、IBが新たに実施する職業教育(IBCC)について、その大学入学者選抜の際に活用について検討するとしていたが、昨年度実施した大学のアドミッション・オフィスへのインタビュー調査の結果、どの大学でもまだこのIBCCへの認知度・理解度が進んでおらず、まだIBCC取得による大学進学者も少ないため、本研究の対象から外すこととする。今年度は、先述のとおり、UCASへの調査および昨年度から実施している大学のアドミッション・オフィスへのインタビュー調査を継続的に行ない、データの妥当性・信頼性を高めていく。
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Research Products
(3 results)