2014 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティック制御を介した微生物二次代謝の活性化による新規天然物の創出
Project/Area Number |
14J06029
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山本 崇史 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / 天然物 / 二次代謝物 / 酵素阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,微生物のゲノム解読が行われ,従来の培養法では発現していない二次代謝物生合成遺伝子の存在が明らかとなった.本研究では,ヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC) やDNAメチル化酵素などの,エピジェネティック制御に関わる酵素の低分子阻害剤を用いて,微生物のゲノム上に存在する多様な二次代謝物生合成遺伝子を活性化し,様々な新規物質の取得を目指した. これまでに,HDAC阻害剤であるSBHAが,いくつかの糸状菌の二次代謝を活性化させるのに有効であることを見出しているが,それでも糸状菌に存在する生合成遺伝子の一部しか活用できていないため,より多くの遺伝子発現を誘導できる条件の探索を行った.昆虫寄生糸状菌や植物内生糸状菌,Chaetomium属菌等を,様々な酵素阻害剤添加条件で培養し,HDAC阻害剤であるニコチンアミドが,多くの糸状菌の二次代謝を活性化させるのに有効であることを見出した.また特に顕著な活性化を示した数種の植物内生糸状菌を大量培養し,阻害剤添加により蓄積が増大した化合物として,様々な新規物質の取得にも成功した.SBHAとニコチンアミドは異なるHDAC阻害の作用機序を示すことから,同種の糸状菌においても異なる二次代謝プロファイルの変化が期待でき,糸状菌の天然物探索研究において,これらをそれぞれ適用することで,より多様な新規物質の創出につながる可能性が示された. また有用物質生産微生物である放線菌では,機能は明らかになっていないものの,DNAメチル化酵素やヒストン様タンパク質など,真核生物のエピジェネティック制御に関わる因子に相当するものが存在している.そこで種々の放線菌を,糸状菌において有効性が確認されたSBHAやニコチンアミドを用いて培養し,二次代謝物生産に与える影響を検討した.しかし二次代謝プロファイルの変化はほとんどみられなかったため,現在異なる手法の検討を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HDAC阻害剤であるニコチンアミドの添加条件が,SBHAとともに多くの糸状菌に対し有効であることを見出し,その条件を用いて様々な新規物質の取得に成功した.一方,放線菌については,二次代謝物生産に影響を与える条件を確立できなかったため,条件検討を続ける予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き有効性を見出したエピジェネティック酵素阻害剤であるSBHAやニコチンアミドを用いて様々な糸状菌をスクリーニングし,多種多様な新規物質の取得を行う.本研究により得られた新規物質については,抗ウイルス活性や,各種がん細胞に対する薬理活性を検討し,新規医薬品リード化合物の発見を目指す. また,最近,糸状菌培養時に,真核生物のリボソームを標的とする抗生物質であるハイグロマイシンを添加することで,二次代謝物生産に変化が生じることを見出した.従って,引き続きエピジェネティック制御を利用した天然物探索を進めるとともに,抗生物質添加による糸状菌の二次代謝活性化についても検討する.
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Research Products
(4 results)