2014 Fiscal Year Annual Research Report
樹状細胞を介した腸管免疫寛容におけるマクロファージ由来TGFβの重要性
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14J06043
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
川村 俊輔 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 腸管免疫 / 免疫寛容 / TGFβ / 樹状細胞 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、大腸粘膜固有層においてCD11c-/loCD11b+マクロファージ(MΦ)がTGFβ1を産生し、さらに、大腸絨毛先端部においてCD11c+CD11b-樹状細胞(DC)と近接することを見出した(未発表)。また、DC特異的II型TGFβ受容体欠損(TGFβRIIDC-KO)マウスが重度の自己免疫疾患様病態を示すことから、MΦが産生するTGFβ1がDCの機能を制御し免疫寛容誘導の構築に寄与するという仮説を立て、以下に示す実験を行った。 はじめに、MΦ特異的TGF-β1欠損(TGF-β1MΦ-KO)マウスの作製を行い定常状態におけるTGF-β1MΦ-KOマウスの体重・生存率を確認したが、TGF-β1MΦ-KOマウスとコントロール群の間に有意な差異は見られなかった。また、TGFβRIIDC-KOマウスにおいて重度の自己免疫疾患様病態を示した大腸・小腸の他に骨髄・胸腺・脾臓・腸間膜リンパ節・末梢リンパ節・パイエル板・における定常状態でのTreg細胞の割合を解析した。しかしながら、いずれの臓器においてもTreg細胞の存在比に変化は見受けられなかった。 次に、炎症モデルを用いてTGF-β1MΦ-KOマウスの解析を行った。TGFβRIIDC-KOマウスでは消化器系に顕著な自己免疫疾患用症状を呈する。ゆえに、炎症性腸疾患誘発モデルとして最もよく用いられるDSS腸炎モデルを用い、TGF-β1MΦ-KOマウスに腸炎を誘発してコントロール群との体重減少率を比較した。この結果、現段階ではコントロール群との間で炎症誘発期、上皮傷害回復期いずれの段階においても有意な差は認められてないが、回復期において、TGF-β1MΦ-KOマウスで体重の回復がコントロール群に比べて遅れる傾向が見られている。DSS腸炎モデルはDSSのロット差により結果が大きく左右されるため、今後同様の実験を繰り返し行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
MΦ特異的TGF-β1欠損(TGF-β1MΦ-KO)マウスの作製には予想以上に時間を要したが、表現型を体重測定、生存率、病理学的解析にて同マウスを評価することができた。しかしながら、いずれの解析においても同マウスにおいて発症が予想された自発的自己免疫疾患様病態を示す所見を得ることができなかったため、DSSを用いた腸炎誘導モデルを同マウスに適用し、解析を行った。この実験は1年目の年間目標に挙げていなかった実験であるが、この検討より腸炎回復期におけるMΦ由来TGF-β1の重要性を示唆する結果を得ることができた。一方で、DSSを用いた腸炎誘導モデルではDSSのロット差により実験結果が大きく異なるという問題を抱え、これにより他の解析に必要なマウスを消費してしまう結果となった。これにより、以降で実験を予定していた『腸管樹状細胞の機能発現におけるマクロファージ由来TGF-β1の役割』を検討する実験に未だ着手できておらず遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
TGF-β1MΦ-KOマウスにDSSを用いた腸炎誘導モデルを適用し、コントロールと比較すると同マウスでは腸炎からの回復(体重の回復)が遅れる傾向にある。この原因としては、①MΦ由来TGF-β1の欠損により腸炎誘導期における炎症が増大している、②MΦ由来TGF-β1の欠損により上皮の回復が遅延している、の二つが考えられる。いずれの仮説が正しいかを確かめるために、DSS腸炎誘導モデルを適用したTGF-β1MΦ-KOマウスを継時的に解析する必要がある。すなわち、腸炎誘導期と回復期においてFCMや切片を用いた免疫染色を行い、腸管の各免疫細胞、特に樹状細胞サブセットの存在比や腸管の損傷をスコア化し精査する必要がある。 また、ヒト免疫寛容構築システムを包括的に理解する上で、ヒトDC、MΦ前駆細胞を同定しその分化や機能の解析を行うことは非常に重要である。この観点から、本研究のヒトへの応用を踏まえた実験系の確立のため、申請者はヒトMΦとDC前駆細胞の同定を試みている。申請者は現在、ヒトDC、MΦ前駆細胞を多く含む分画をヒト臍帯血中に同定しており、特にMΦ前駆細胞に関しては非常に興味深い結果を得ている。この実験により同定された各分画をより詳細に精査する予定である。
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