2014 Fiscal Year Annual Research Report
可積分な固有値計算アルゴリズムによる重複固有値計算の漸近解析
Project/Area Number |
14J06045
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
赤岩 香苗 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 離散可積分系 / 固有値計算 / 重複固有値 / 漸近解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
可積分な離散戸田方程式との対応が知られるquotient-difference (qd)法は、3重対角行列の固有値計算アルゴリズムとして有名であり、改良型のdqds法がLAPACKに実装され国際標準となっている。近年、こうした離散可積分系と数値計算アルゴリズムの関係が注目されており、離散可積分系に基づいた「可積分アルゴリズム」と呼ばれる数値計算法が提案されている。実問題に現れる行列はしばしば重複固有値をもつが、固有値計算の収束解析ではもっぱら固有値の単純性を仮定した議論が行われており、重複固有値を許す場合の詳細な解析が待たれていた。本研究では、行列固有値計算のための可積分アルゴリズムに対して、重複固有値をもつ行列に対する収束性等の振る舞いを調べることを目的とする。特に、離散可積分系の解が行列式で書き下せるという特性を利用して、可積分アルゴリズムの漸近挙動を解析する。
本年度は、典型的な可積分アルゴリズムである3重対角行列の固有値計算のためのqd法に着目し、重複固有値をもつ行列に対するqd法の収束性を理論的に示した。この結果について、2014年8月に韓国ソウルで行われた国際会議ILAS2014で講演を行った。同会議の特集号である国際学術論文誌Linear Algebra and its Applicationsに講演成果をまとめて投稿中である。可積分アルゴリズムの1つにHessenberg型のTotally Nonnegative行列の固有値計算を行うdhToda法がある。これに対応する離散可積分系である離散ハングリー戸田方程式に対しても、解を記述する行列式の展開表示に関する基礎的な結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
qd法と対応する離散戸田方程式は離散可積分系における典型的な方程式であり、qd法に関する収束解析の結果は今後の研究の指針となる。また、離散ハングリー系に対して本研究の解析手法が有効であることを確認できたことは、本研究の目的が達成可能であることを強く示唆しており、研究計画はおおむね順調に進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、まず基礎的な結果が得られているdhToda法に関して収束解析を進め、成果をまとめる。離散Lotka-Volterra方程式に基づくmdLVs法やその他の行列固有値計算のための可積分アルゴリズムに対しても、重複固有値をもつ場合の行列式の展開表示を与えて漸近解析を進める。最近の研究で離散ハングリー系よりも広いクラスの離散可積分系が導出できており、こちらに対しても同様の漸近解析が可能であると期待される。
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Research Products
(6 results)