2014 Fiscal Year Annual Research Report
1920年代の国際通貨体制-再建金本位制をめぐる米英関係の展開
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14J06054
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩崎 総則 京都大学, 法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 連邦準備制度 / ベンジャミン・ストロング / 通貨の政策協調 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実績の概要として、二点を指摘することができる。一点目は1925年の金本位制への復帰に至る過程として、アメリカ国内の金本位制やヨーロッパ復興に関する議論の展開の状況を理解する事であった。この点について、アメリカ合衆国、国立公文書館(National Archives)において、財務省や連邦準備制度に関する史料の調査を行ったところ、1918年の第一次世界大戦終了直後から、ニューヨーク連邦準備銀行総裁のベンジャミン・ストロングと財務省との間において、ヨーロッパ復興のための資金の融通が具体的に必要であることが指摘されていたということが理解された。
一方で、1920年代の金本位制の性格をより明らかにするために、国際通貨制度をいかに維持管理し、安定へと導くのかという視点からの考察もまた同時に進めていった。国際通貨制度を安定化させるうえで「通貨覇権」「国際機関への権限の委譲」、「国家間の通貨政策協調」の3要素が重要視されてきたが、特に3点目の通貨政策協調という言葉の持つ多義性を理解することに取り組んできた。1920年代の再建金本位制の成立過程は、具体的な国際通貨制度が存在しない中において、「制度」と呼びうるものそれ自体を創設しようとする一回性の協調であったと特徴づけることができるとともに、どの一国も覇権的立場を取りえない中での「分散化された協調」であったと指摘することができよう。
こうした視点を踏まえた上で、修士論文を加筆修正することを通じて、公表論文へまとめることに現在取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の成果としては、おおむね順調に進展していると考えられる。アメリカ国内での連邦準備銀行や財務省間の議論の状況を、第一次世界大戦の終結から再建金本位制の成立へと至る一つの筋道として理解することができるものとして重要なものであったと認識している。特に、1919年には信用と通貨の膨張にたいする警鐘を鳴らし、貿易額に伴った拡大や、過去の世界の中央銀行の経験にならうこと、さらには連邦準備理事会と連邦準備銀行、そして財務省が責任を共有することがすでに指摘されており、この時代のアメリカの「孤立主義」といわれる性格付けと様相を異にするものであると理解されると考える。
加えて複数通貨が共存する国際社会において、為替相場を安定させることを通じて取引の円滑化や金融危機の防止を担う国際通貨制度の持つ機能を、通貨政策協調の持つ多義性を明らかにする観点から捉えなおすことに関して、一定の進展を見たと考えている。すなわち、国家間の協調関係がいかなる要素から達成されるのかという観点についてであり、パワーの分布にもとづく政策協調の性格付けについて取り組んだ。こうした成果を踏まえて、特に複数の時代や、異なる国際通貨制度の特徴を比較し検討しようという、博士論文につながる構想を「京都大学大学院思修館」において報告を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
翌年度の研究方針としては以下の点が挙げられる。今年度の研究成果を踏まえ修士論文を加筆修正し、再建金本位制の成立を中心とし、通貨制度の維持管理における政策協調の側面を考察しようとする公表論文を『法学論叢』(京都大学法学部紀要)に投稿することを目標とする。
博士論文のさらなる充実を目指して、ニューヨーク連邦準備銀行史料の調査を行い、特にベンジャミン・ストロングのヨーロッパ復興と国際協調への考えの進展に関して、1910年代からの過程について考察を行う。また、イングランド銀行や英国財務省、外務省史料の調査を行い、イギリス側の金本位制復帰にたいする認識と、アメリカとの関係について明らかにすることを目指す。
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