2014 Fiscal Year Annual Research Report
有機触媒-金属微粒子触媒二元系触媒によるベンゼン環の触媒的不斉水素化の開発
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14J06181
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
池田 龍平 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 触媒的不斉合成 / 水素化 / ベンゼン / 不斉有機触媒 / 金属担持触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
単環式芳香族炭素環(ベンゼン環)の高エナンチオ選択的な触媒的不斉水素化は未だ成功例が報告されていない。そこで、水素結合を利用して光学活性有機触媒で基質を修飾し、ベンゼン環の水素化に高活性な金属微粒子触媒で還元するという戦略で、この高エナンチオ選択的な触媒的不斉水素化の開発を試みた。まず、基質とN-エチル-o-メトキシ安息香酸アミドをモデル基質として、このベンゼン環が高立体選択的に水素化される条件を探索した。まず、市販の光学活性リン酸を立体制御のための試薬として共存させ、ルテニウム炭素で水素化を試みた。しかし、量論量のリン酸の存在下ではルテニウム炭素の触媒活性が大きく低下し、基質と有機触媒との水素結合が弱くなると考えられる高温条件下、プロトン性溶媒中では水素化が進行するものの、室温下や非プロトン性溶媒といった条件では水素化自体が進行しなかった。また、他の金属微粒子触媒やカンファースルホン酸といった他の光学活性ブレンステッド酸でも水素化を試みたが、高いエナンチオ選択性で反応が進行する条件を見出すことはできなかった。 一方、研究の過程でロジウム炭素と不斉ルテニウム錯体を組み合わせて用いてサリチル酸エステルの水素化を検討した結果、91:9の選択性でtrans体の光学活性シクロヘキサノールが91% eeの光学純度で優先して得られることを見出した。このような金属微粒子触媒と均一系不斉遷移金属触媒を組み合わせて利用する不斉水素化はこれまでに例がなく、不均一系触媒を用いた不斉水素化に新しい方法論を提供するものと予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初想定した水素結合を利用して光学活性有機触媒で基質を修飾し、ベンゼン環の水素化に高活性な金属微粒子触媒で還元するという戦略は現時点ではうまくいっておらず、ベンゼン環の水素化は進行するものの、エナンチオ選択性はほとんど発現していない。一方で、研究の過程で金属微粒子触媒と均一系不斉遷移金属触媒を組み合わせてもちいるという新しい手法を見出し、目的のベンゼン環の水素化を高いジアステレオ及びエナンチオ選択性で還元することに成功した。以上の結果を受けて、現在までの達成度を概ね進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は金属微粒子触媒、有機触媒、及び基質の組み合わせを探索したが、満足した結果は得られなかった。そこで本年度は基質としてピリジン誘導体なども精査する。ピリジンはこれまでの基質と異なり、環上で有機触媒と水素結合するためより高いエナンチオ選択性の発言が期待できる。この研究を通して有機触媒ー金属微粒子触媒二元系触媒の手法を確立し、最終的にベンゼン環の触媒的不斉水素化の開発を目指す。 一方で、本研究の過程で見出した金属微粒子触媒-均一系不斉遷移金属触媒二元系触媒による不斉水素化ではさらなる基質の拡大を目指す。本反応はサリチル酸エステルの部分還元によって発生するβ-ケトエステルを均一系不斉遷移金属触媒で動的速度論的光学分割を利用して水素化することで高い立体選択性を実現している。そこで、サリチル酸エステルのヒドロキシ基をアミノ基に置き換えたアントラニル酸でもイミンーエナミンの互変異性を利用することで同じように水素化できるのではないかと考えられる。本年度はこのアントラニル酸誘導体についても本手法を用いて高エナンチオ選択的な触媒的不斉水素化を実現する。
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Research Products
(5 results)