2014 Fiscal Year Annual Research Report
二十一世紀の夜明けにおける国際社会の中にある国際組織法秩序
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14J06268
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
SCHIFANO ADRIEN 一橋大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 国際法 / 国際組織 / 法秩序 / 国際法の断片化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.本研究課題に関して進展した点 参照することになるモノグラフ、関連するジャーナル上の論文、国際組織が発行した公式文書等の関連文献を読了し、そのうちの重要な文献を整理した。また、国際司法裁判所、国際常設裁判所、国連行政裁判所、国際労働機関行政裁判所、世界銀行行政裁判所における国際組織に関する裁判例を調査し、分析を行った。加えて、本研究課題における法的問題に当てはまる実例や国際組織を探し出し、特定した。これらの得られた知見を基に、論文の第一草稿を執筆し、ゼミナール等で報告を行った。指導教授との議論を通して、いくつかの問題について分析を深め、現在論文の第二草稿を執筆中である。 2.学会誌投稿のための論文執筆に関して進展した点 現在、研究計画のスケジュールに従って、本研究課題に関連する問題について、博士論文とは別に学会誌に投稿するための論文を執筆中である(脚注を含め英文8000単語から12000単語の分量となる予定である)。この論文では、国際組織の中における権力(パワー)の分配をテーマとする。そして、この論文の目的は、国際組織の中における権力の分配を分析する上で、国家の中の権力の分配を分析するための分析枠組み(憲法理論)が有用であることを提言することである。この分析方法を用いるにあたって、分析対象の違い、国際組織の中か国家の中であるかによって異なってくる問題の違いを考慮に入れている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際組織を法秩序として捉え、その姿を検討した。そして、この検討を通して、これらの法秩序の類型の特色、すなわち、「法的な基礎と行動」があることを確認した。このため、本研究計画に書いた予定のように、国際組織法秩序の定義を明らかにすることができた。具体的には、国際組織と言うのは質料的に定められた抽象的な機能に基づく、実質的に制限がない法秩序である。すなわち、国際組織法秩序は拡大していく傾向にある。さらに、国際組織には国際法の一般原則が適用されない傾向にあるということである。 定義に基づいて、国際組織法秩序と国際法秩序の関係を検討した。国際法秩序の中にある国際組織が乱立することを扱った本研究は、国際法断片化と言う最近の理論的な問題にも関わることを確認した。したがって、本研究の目的の一部を達成した。 ただし、平成26年度の終わりまでに本研究の結論を定める予定であったが、現時点において得られた研究の結論については満足していないため、さらに検討する。このため、本研究の実際的な内容に変更はないが、結論のみ現在とは異なるものにしていく。結論の検討にあたって、国際法断片化と言う問題に関わる様々な研究者の最近の理論を確認しなければならない。このため、今日の英語、フランス語、日本語圏の国際法学における様々な理論と比較して本研究の位置づけ及び結論のオリジナリティーを検討し、結論を決定していく予定である。本研究において検討した点に基づき、見出した国際組織に関わる様々な特色を集約し、または、関連付け、全体の結論を構成していかなければならない。
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Strategy for Future Research Activity |
論文の第二草稿を書く。また論証する点に関わるモノグラフとジャーナル上の論文等を検討する。第二草稿の細部を訂正し、関係する事例と関連文献に基づく調査結果を反映させる。上記に述べたように、結論の検討を進める。本研究における調査結果、理論の検討結果に基づき、特に最近の国際法学における議論の状況に照らして妥当、かつ社会に貢献し得る結論を導く。本研究の目的は国際組織の特徴を分析することであるため、国際組織の特徴が国際法秩序にどのように影響するかを評価するために、同様の分析を行った国際法学の学説における最近の立場を検討しなくてはならない。この検討には、国際法断片化、自己完結的レジーム、国際法秩序の統一性、規範の重複と競合、主権概念を中心とした現代の国家概念、国際法規範の実体法化と階級化、現代の国際法秩序概念の問題についての関連文献を含む。これらの理論について、英語、フランス語、日本語圏の国際法学における様々な理論と比較して本研究の位置づけ及び結論のオリジナリティーを見定め、結論を決定する。これらの理論の検討にあたっては、特に、最近のモノグラフに当たる必要がある。加えて、これらの研究課題は、国際法学以外の社会科学の分野においても、関連する研究があるため、それらにも目を通す必要がある。具体的には、社会学におけるネットワーク理論がこれにあたる。以上により、平成28年3月末までに本研究を完成させる。
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