2014 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀ブルガリアの商港都市に関する社会史的・建築学的研究:都市空間と交易
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14J06280
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
早坂 由美子 一橋大学, 社会学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 都市史 / 建築史 / バルカン・東欧史 / ドナウ川 / 黒海 / 正教徒商人 / 国際情報交換 / ブルガリア:セルビア |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は①ドナウ下流域・黒海沿岸のフィールド・都市調査、②ブルガリア国立図書館ブルガリア歴史アーカイヴにおける文献史料調査・収集、先行研究の収集・整理、③収集した史料の分析と論文の執筆を行った。 ①に関しては、平成26年10月~11月に調査を行った。ドナウ下流域の約半分に相当するセルビアの鉄門からブルガリアのルセまでの沿岸地形調査と港湾部を中心とした都市の立地と空間構成に関する調査を行い、沿岸地形と都市・集落の分布・立地の分析を行った。都市調査は19世紀の主要商港都市であるヴィディン、ルセ、ヴァルナの三か所で実施した。19世紀の港湾部と商業地区の復元的考察を目的として現行の地籍図・航空写真、19世紀当時の古地図と実際の都市空間を照合して空間変遷の分析を行った。 ②に関しては、平成27年2月にブルガリア国立図書館において行った。ブルガリア歴史アーカイヴ部門では、所蔵文書史料の総目録全体に目を通し、商人名または商会名ごとにまとめられた19世紀のブルガリア正教徒商人に関する項目を抽出したうえで、各項目の史料概要の把握に努めた。また、ブルガリア正教徒商人によるドナウ交易ならびにドナウ流域史に関する先行研究の収集を行った。 ③に関しては、「ブルガリアの都市と交易に関する史的研究:19世紀ブルガリア正教徒商人を中心に」という題目で博士論文を提出し、平成26年9月に東京大学から博士(工学)の学位を取得した。また、日本建築学会若手奨励特別研究委員会報告書に「19世紀末ソフィアにおける都市の荒廃―陸路交易との関係を中心に」を執筆し、19世紀のドナウ交易の隆盛によるバルカン半島内陸交易都市の衰退過程を著わした。 調査・研究過程においてブルガリアおよびアメリカの史学研究者と情報交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、これまでの研究成果を博士論文としてまとめ、そのなかで本研究課題に接続する問題である19世紀のドナウ交易とブルガリア正教徒商人のネットワーク形成との関係性に関して地理的・都市的視点から論じた。日本建築学会計画系論文集への投稿論文を執筆した他、国際学会の発表準備にも取り組み、精力的な研究発表活動を行った。 ブルガリアとセルビアにおけるフィールド・都市調査からは、ドナウ下流域の実際の地形と各都市の空間構成を把握し、各都市の建築物に関する文献も収集することができたため、今後、研究課題を遂行するうえで重要な基礎情報を揃えることができたといえる。ブルガリア国立図書館における文書史料調査からは、19世紀のブルガリア正教徒商人に関する現存文書史料の全体像を把握することができ、ドナウ交易に関わった商人・商会を特定することができたため、今後の文書史料調査の基礎を築くことができたといえる。 以上のことから、平成26年度は研究発表、学術調査ともに順調に遂行することができたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究発表は以下のように予定している。Society of Architectural Historians(アメリカ建築史学会)において、19世紀のドナウ航路の開発と商業化にともなうドナウ下流域の都市空間の変化について研究発表を行う。掲載が確定している日本建築学会計画系論文集投稿論文「ブルガリア正教徒商人による商業施設の建設と交易空間―19世紀のタルノヴォを事例として―」は平成27年6月に刊行される予定である。現在執筆中である19世紀ブルガリア正教徒商人の交易ネットワークに関する論文は、史学系論文誌への投稿を予定している。その他、19世紀ルセの港湾部と商業地区を中心とした都市空間の変遷を題材として、国内研究会での報告と日本建築学会投稿論文の執筆を行う予定である。 海外調査に関しては、平成26年度からの継続としてブルガリア国立図書館ブルガリア歴史アーカイヴにおけるブルガリア正教徒商人のドナウ交易関連文書史料の調査・収集を行う。また、ブルガリア国立文書館ルセ分館において19世紀のブルガリア正教徒自治組織の文書史料の調査・収集を行う。フィールド・都市調査はドナウ下流域のルセに関して重点的に行う。黒海側の港町との比較材料とするため、バルカン半島のアドリア海側(現クロアチア)の長い歴史を持つ商港都市における港湾部の調査と、関係する先行研究の収集も予定している。
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Research Products
(1 results)