2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J06290
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
高木 駿 一橋大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | カント / 倫理学 / 哲学 / 美学 / 価値理論 / ドイツ観念論 / 判断力批判 / 純粋理性批判 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、カントの価値概念の骨子あるいは価値概念の核である絶対的価値概念が展開される『道徳形而上学の基礎づけ』(1785)と、多元主義の概念が展開される『判断力批判』(1790)、およびそれらに関する二次文献を読解・考察・整理した。 前者の遂行に関しては、近代倫理学研究会主催の連続企画「『基礎づけ』研究の今」におけるH.クレメ教授(ハレ大学・ドイツ)の論文に関する報告(6月,1月に計二回)、加えて、学術振興会特別研究員(PD)の山蔦真之氏主催のH.クレメ教授を招いた国際WS(3月)における提題("Die “performative Deduktion“ als transzendentales Argument? ")を通じて、理解を深めることができた。その結果、あらゆる観点・コンテクストにおいて妥当する絶対的価値(人間の尊厳)をそのままの形で主張することにはかなりの困難がつきまとうという仮定的見解が得られた。 また、後者の遂行に関しては、美学会東武例会における口頭発表「純粋趣味判断の客観とは何であるのか?―『判断力批判』における把捉作用の解明に基づいて」、および近代倫理学研究会における口頭発表「「趣味の主観主義」を拡張するー『判断力批判』における「認識一般」概念を手がかりに」を通じて、理解を深めることができた。その結果として、趣味判断の主観的普遍性から、多元主義、つまり各人が自身の価値判断への賛同を他のあらゆる人に要求し、論争し合えることを許容する空間が析出されるという見通しが得られた。 さらに、群馬大学の小谷英生准教授と定期的に開催している現代内在的価値理論に関する研究会では、G.E.ムーアの内在的価値の古典的定義を理解し、それを巡る最新の議論を検討することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の主要課題は、多元主義の文脈におけるカントの価値概念ないし価値判断(判定)の定式化であった。当初の予定では、その課題を、『純粋理性批判』(1781/87)、『道徳形而上学の基礎づけ』(1785)、『判断力批判』(1790)の読解を通じて遂行するはずであったが、実際には、カントの価値概念の骨子あるいは価値概念の核である絶対的価値概念が展開される『基礎づけ』と、多元主義の概念が展開される『判断力批判』、およびそれらに関する二次文献の吟味に終始してしまった。(『純粋理性批判』「演繹論」よりも『判断力批判』の方に「心的態度(評価態度)」が読み取れる叙述が多かったからである)。とはいえ、それら二つに関する研究は、国内での発表や国内外の研究者とのやり取りを通じて、かなりの理解度に達したと考えられ、現在の進行状況として、ならびに、平成27年度の研究実施のための下地としては十分であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究実地状況からは、直近の課題として次のものが導かれた。1.『判断力批判』をさらに細かく読解し、趣味判断の主観的普遍性の解明を通じて、多元主義を厳密に定義する。2.趣味判断という価値判断における多元主義と絶対的価値概念との関係を検討する。また、研究計画で予定していた通り、3.内在的価値概念とそれに関する議論を現在進行形でより正確に把握し、その概念を定義する。4.2と3の課題の結果を擦り合わせ、検討する。 当初予定していたG.シェーンリッヒ教授(ドイツ・ドレスデン工科大学)のもとでの在外研究に関しては、受入研究者の加藤泰史教授の科研費プロジェクトにて何度も会う機会がすでにあり、これからも(少なくとも、むこう3年間は)そうした機会を得られるので、長期での在外研究ではなく、短期での訪問に変更する。さらにその際には、平成26年度に訪れたS.シマダ教授(ドイツ・デュッセルドルフ大学)のコロキウムにも参加し、可能であれば発表を行いたいと思う。
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Research Products
(5 results)