2015 Fiscal Year Annual Research Report
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14J06290
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
高木 駿 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | カント哲学 / カント美学 / 価値理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、平成26年度の課題遂行の結果として得られた課題、つまり、1.『判断力批判』をさらに細かく読解し、趣味判断の主観的普遍性の解明を通じて、多元主義を厳密に定義する。2.趣味判断という価値判断の多元主義と絶対的価値概念との関係を検討する。3.内在的価値概念とそれに関する議論を現在進行形でより正確に把握し、整理する、という課題を遂行してきた。 まず1については、『判断力批判』およびその二次文献を集中的に精読することで、趣味判断を、その根拠の感情の生成過程、趣味の評価的構造を明らかにした。これについては、その成果をカント研究会第291回例会、日本カント協会第40回大会、The 14. Hitotsubashi International Conference on Philosophy/Social Philosophy/Applied Ethicsにおいて報告し、『美学』第68巻、『日本カント研究』第17号に投稿し、採択された。 次に2については、受入研究者の加藤泰史教授が主催するワークショップに定期的に参加することを通じて、カントの絶対的価値ないし尊厳概念、および尊厳概念一般の現代的再展開を確認しつつ、『道徳形而上学の基礎づけ』を読解し、カントの絶対的価値(尊厳)概念を改めて検討した。さらに、趣味判断を可能にする制約と道徳的実践判断の制約に類似性を見出し、趣味判断から絶対的価値概念を捉え直す見立てを立てた。 最後に3については、群馬大学の小谷英生准教授と協力することで、定期的に研究会を開催し、内在的価値概念をめぐる古典的な議論から最近の議論までを検討し、より正確で詳細な理解を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、平成26年度の研究遂行として残した課題、つまり1.『判断力批判』をさらに細かく読解し、趣味判断の主観的普遍性の解明を通じて、多元主義を厳密に定義する。2.趣味判断という価値判断の多元主義と絶対的価値概念との関係を検討する。3.内在的価値概念とそれに関する議論を現在進行形でより正確に把握し、整理する、という課題をおおむね遂行することができた。とりわけ、『判断力批判』における多元的な価値判断である趣味判断の構造分析に関しては、学会誌への投稿が認められるなど内的にも外的(公的)にも進展することができた。また、絶対的価値概念あるいは尊厳概念に関しても、最新の文献や著名な研究者のワークショップを通じて、直近の現代的観点を学びながら、それを前提に再考することができた。さらに、趣味判断を詳細に分析した副次的な成果として、カントの認識論を「感情」というタームから再構成する可能性が開けたと考えられ、こちらについても新たな研究が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題としてあげられるのは、1.カントにおいて多元主義的価値の観点から絶対的価値概念を捉え直すこと、2.そうして捉え直したカントの価値概念と近年の内在的価値概念とを比較検討すること、である。1については、引き続き『判断力批判』と『道徳形而上学の基礎づけ』の精読から、多元主義的価値判断である趣味判断の根拠としての感情が絶対的価値概念あるいはそれを判定する価値判断においていかなる位置にあるのかを考察することで、2については、1の遂行から得たカントの価値概念を、近年の内在的価値概念のなかでもっとも説得力があると考えられる「態度理論」から考察することで、遂行されることが期待できる。
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Research Products
(5 results)