2015 Fiscal Year Annual Research Report
自発的啼泣の初期発達-音響的、生理学的解析および心理的指標からの検討
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14J06302
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
新屋 裕太 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 自発的啼泣 / 新生児 / 早産児 / 音響解析 / 自律神経 / 迷走神経 / 心拍変動 / 情動 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳児期の啼泣は、神経生理状態を測る簡便な指標として研究されてきたが(Soltis, 2004)、特に主要な自律神経の一つである迷走神経は、心拍の変動や声帯の緊張緩和に関与し、啼泣の基本周波数(F0)に影響することが指摘されている。申請者は、これまでに早期に出生した児ほど新生児期の自発的啼泣のF0が高いことを明らかにしたが(Shinya, Kawai, Niwa, Myowa-Yamakoshi, 2014)、早産児の自発的啼泣のF0が高い原因として、迷走神経活動の低下に伴う声帯の過緊張が原因である可能性が考えられる。こうした可能性を検討するため、今年度は昨年度から引き続き、予定日前後まで成長した早産児と満期産新生児を対象に、迷走神経活動を心拍変動の解析により評価し、自発的啼泣のF0との関連を調べた。その結果、静睡眠時の迷走神経活動と自発的啼泣のF0の高さが関連する可能性を示した。特に、早産児では、迷走神経活動が低い児ほどF0が全体的に高く、満期産児では、迷走神経活動が高い児ほどF0の変化が大きいことが明らかになった。 本研究の意義は、認知発達に重要な迷走神経の成熟を、自発的啼泣の音響特徴によって非侵襲的かつ簡便に評価できる可能性を示した点にある。また、早産児では、養育者による虐待リスクが高いと報告されているが(Spencer et al., 2006)、迷走神経成熟を促進させるケア(カンガルーケアなど)を行うことで、養育者のストレス要因の一つである“甲高い泣き声”を緩和できる可能性を示唆した点も重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度実施した早産児の自発的啼泣と自律神経活動の関連についての研究論文を執筆し、発達神経科学分野の専門誌「Developmental Psychobiology」に論文が採択された。また、新生児期に自発的啼泣の評価を行った児のフォローアップを継続的に行い、自発的啼泣の音響・生理的特徴と、その後の乳児期の認知発達・社会性発達との関連についての検討を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、平成27年度から引き続き、新生児期に自発的啼泣の評価を行った児のフォローアップを継続的に行い、自発的啼泣の音響・生理的特徴と、その後の乳児期の認知発達・社会性発達との関連についての検討を進める。さらに、新生児期の自発的啼泣と乳児期の認知発達との関連についての縦断データを論文化し、発達科学系専門誌への投稿を目指している。
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Research Products
(5 results)