2015 Fiscal Year Annual Research Report
血液脳関門におけるP-glycoprotein輸送機能の病態変動制御機構
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14J06383
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
星 裕太朗 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 血液脳関門 / P-glycoprotein / LC-MS/MS / リン酸化プロテオミクス / 定量標的絶対プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、血液脳関門におけるP-glycoprotein(P-gp)輸送機能の新規制御分子を網羅的プロテオミクスによって同定し、そのタンパク質のリン酸化修飾に伴うP-gpの輸送機能の変動の関係を明らかにすることを目的としている。本年度は、炎症病態モデルとして腫瘍壊死因子(Tumor-necrosis factor-α, TNF-α)を曝露したヒト脳毛細血管内皮細胞株(hCMEC/D3細胞)を用いて、P-gp輸送活性の制御機構を解明した。 1時間のTNF-α曝露によってP-gpを介したvinblastineの排出輸送活性がTNF-α濃度依存的に有意に低下した。同条件で細胞膜画分におけるP-gpのタンパク質発現量は有意に変動しなかった。昨年度解析した、過酸化水素水(H2O2)を曝露したモデルではP-gpの細胞膜局在が低下したことから、H2O2とTNF-αではP-gp輸送活性の変動メカニズムが異なることが示唆された。 リン酸化プロテオミクス解析の結果、約80個の有意なリン酸化変動を示す分子群を同定した。既報の炎症シグナルにprotein kinase C (PKC)が関与することが示されていることから、PKCによってリン酸化制御を受ける分子を重要な候補として5分子を選択した。個々の分子に対する阻害剤を用いて、TNF-αによるP-gp制御シグナルへの関与を解析した。結果、ある一つのタンパク質の阻害条件下では、TNF-α曝露によるP-gp輸送活性の低下が抑制された。これらの結果は、このタンパク質のリン酸化変動が炎症時のP-gpの機能調節に関与することを示唆している。特にH2O2とは異なるメカニズムを介してP-gpが制御される点は、生態内の病態変化に対する血液脳関門の多様な応答性を理解する上で重要な知見となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年に引き続き、計画していた「病態時のリン酸化量主要変動分子の同定」について、in vitroの実験系を用いることで達成した。また、本年度に計画していた「P-gp輸送活性の制御分子の特定」にも成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに明らかにした制御分子のin vivoにおける関与の有無を検証し、どの程度P-gp基質薬物の脳移行性の変化に寄与するかを明らかにしていく予定である。また、制御分子がどのようにしてP-gp機能を変動させているかについて、1) 膜微小環境変化(ラフト等)、2) 構造学的変化(複合体等)の観点から解析を進める予定である。
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Research Products
(3 results)