2014 Fiscal Year Annual Research Report
Srcファミリーキナーゼ活性制御因子Pragminの生理学的解析
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14J06406
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
千田 淑惠 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 胃がん / ピロリ菌 / CagA / キナーゼ / Csk / Pragmin / EPIYA |
Outline of Annual Research Achievements |
胃がんは世界部位別がん死亡の第2位を占め、毎年70万人が命を落とす。ある種の胃がんの発症には、CagAタンパク質を作るピロリ菌株が関与している。ピロリ菌はヒトの胃に感染すると、胃の上皮細胞に対してCagAを注入する。CagAは細胞内でEPIYAモチーフ領域にチロシンリン酸化を受け、複数の内在性分子と結合して機能を脱制御する。この事実からCagAは上皮細胞の内在性アミノ酸モチーフを模倣してシグナル伝達を攪乱していると推察し、EPIYAモチーフを持つ内在性分子Pragminに着目した。PragminはEPIYAモチーフのリン酸化依存的に細胞がん化に関与すること、CagAの標的分子の1つであるCskと複合体を形成することから、PragminのEPIYAモチーフの機能を明らかにすることはCagAによる細胞がん化の機構解明につながると考えた。そこで、本研究ではPragmin-Csk複合体形成の機能的意義を明らかにすることを目的とした。 ヒト胃上皮細胞株および組換えタンパク質を用いたin vitroにおける実験によりPragminのEPIYAモチーフはCskによってチロシンリン酸化されること、PragminはEPIYAモチーフを介してCskと直接的に結合し、Cskを活性化することを明らかにした。これらの結果より「Pragmin-Csk複合体形成の機能的意義はPragminによるCsk活性化のポジティブフィードバックである」と結論づけた。本研究は内在性EPIYAモチーフによるCsk新規活性制御機構を明らかにした点で細胞生物学的に重要な意義があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、CskによるPragminのチロシンリン酸化部位の同定とCskによるPragminリン酸化の機能的意義の解明を大きな目的としていた。Pragminのリン酸化部位はPragminが持つチロシン残基をフェニルアラニン残基に置換した各種変異体をヒト胃上皮細胞株にCskとともに発現させることで同定を完了した。機能的意義の解明は当初の計画を少し変更し、PragminとCskの組換えタンパク質を作製し、in vitroで評価することでPragminのEPIYAモチーフを介したCskの新規活性化制御機構という意義を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はPragminによるCsk活性化の生物学的意義をより詳細に明らかにすることを目的とする。研究計画ではPragminの偽キナーゼドメインによるCskの活性制御を想定していたが、偽キナーゼドメインではなくEPIYAモチーフによるCskの活性制御機構が明らかになった。EPIYAモチーフはCagAの病原活性に必須のアミノ酸モチーフであるため、CagAはEPIYAモチーフを用いて内在性『EPIYA』モチーフシグナルネットワークを操作することで細胞をがん化させているという作業仮説をたてこれを検証していく。
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Research Products
(1 results)