2014 Fiscal Year Annual Research Report
ハンケル表現と対称錐上の調和解析、及びその数論等への応用
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14J06457
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 公人 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | L関数 / 展開 / 一様収束 / 直交多項式 / 確率分布 / 統計多様体 / 測地線 |
Outline of Annual Research Achievements |
直交多項式である Meixner-Pollaczek 多項式による, Dirichlet L関数の展開について研究した. Meixner- Pollaczek多項式のいくつかの L 関数の展開については, 先行研究があったが, 報告者はこれまではっきりしていなかった展開の一様収束性を, 条件付きで一般の有理型関数に対して証明することができた. この事実により, Dirichlet L 関数などの展開を考え, それらの非自明零点を近似多項式の零点で調べる研究を進めた. 具体的には, 近似多項式の零点の存在領域を複素平面上の円板の形で漸近的にoptimalに求めた. また, Meixner-Pollaczek多項式によるRiemann zeta関数の展開を考えたときに, その展開家数が初等関数の積分で与えられるという利点を用い, 高次の近似多項式の零点を数値計算で求めた. Meixner-Pollaczek多項式が定めるMeixner過程に関連して, 統計多様体の測地線の研究も行った. 報告者は基本的な確率分布である正規分布がなす統計多様体の測地線を得る結果に対する別証明を, より一般的な楕円分布のなす統計多様体がRiemann多様体として正定値対称行列全体に埋め込まれるという先行研究の結果を用いて与えた. 正定値対称行列全体は対称錐の典型的な例であり, 本研究のテーマであるHankel変換が作用する空間である. さらにこのときに行った定式化を用いて楕円分布の統計多様体の測地線を求めることを目指し, 楕円分布の測地線の方程式を正定値対称行列が満たす制約条件付きの線形方程式として表した. この過程で楕円分布のなす統計多様体は一つのパラメータを持つFisher計量で定義され, このパラメータをある値に固定すると正規分布のなす統計多様体が得られるという定式化を与えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
直交多項式によるL関数の展開の一様収束性は計画通りの成果である. また, 直交多項式に関する応用である確率分布の研究でも, 統計多様体の測地線の問題について表現論的に良い枠組みを整えることができた. 正規分布のなす統計多様体は対称錐の例である正定値対称行列の空間の部分多様体として実現されるが, その多様体の測地線に関する先行結果をより一般的な楕円分布へ拡張するための重要な準備ができた. また対称錐上の調和解析と関連づけて, 統計多様体上での調和解析を展開するという問題を設定することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
統計幾何においては, Riemann接続の他にも重要な接続があり, これらの接続は一つのパラメータで結ばれる. よって考えるべき測地線の方程式の族は, 楕円分布が持つパラメータと接続を定めるパラメータの2つのパラメータを持つことになるため, これらを式に反映させ, その関係を見ることを試みている. また, 測地線が指数関数を用いて与えられるという対称空間の性質があるが, 正規分布の統計多様体もこれに近い性質を示しているため, 正規分布, または楕円分布のなす統計多様体上での調和解析を検討している. 実際, 正規分布の測地線はリー群SO(p, q)に対するカルタン分解におけるp部分の元と見なせる行列の指数関数を定義し, その部分ブロックを取り除くという操作で得られている. その測地線の方程式は指数関数の満たす線形方程式の射影という形で得られる. このような事実から, 正規分布, または楕円分布, Meixner-Pollaczek多項式の密度関数のなす統計多様体上で調和解析を考えることは興味深い問題であると考えられる. 楕円分布の統計多様体は既に等質空間であるので, 一般の等質空間上の調和解析よりどれだけ強い事実が得られるかが問題である. また, GL(2, R)またはその部分群の統計多様体への作用が, 統計学的にどのように解釈されるのかも, 応用上興味深く, これからの課題である.
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Research Products
(4 results)