2014 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外分光技術を基盤とする同時イメージング法を利用した熱物質輸送現象の定量的解明
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14J06521
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
川嶋 大介 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | マイクロ化学チップ / 中和反応 / イオン輸送 / 近赤外分光 / 吸収イメージング / 塩濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,2種類以上の溶質が存在する条件下で,含有する溶質濃度の同時定量化および化学反応によって生じる発熱・吸熱による温度変化の観察から,反応拡散による輸送現象の時空間的な変化の観察を行った.これに際し,酸・アルカリ水溶液(HCl, NaOH)の中和反応を対象とした実験を実施した. (1)HClとNaOHおよび両者の反応生成物であるNaClの近赤外吸収スペクトルの測定を行った.HClとNaOHでは,波長1520 nmに溶質の濃度に依存しない等吸収点が出現した.この等吸収点は,NaCl水溶液では観察されず,酸・アルカリ特有のものである可能性が高い.この等吸収波長におけるNaCl濃度と吸光度の較正直線を取得した. (2)流路深さ0.5 mmの矩形流路チップ内にて,HCl水溶液とNaOH水溶液を混合させたときの拡散反応の時空間変化を観察した.測定には,近赤外カメラとチョッパ,狭帯域透過フィルタを組み合わせた2波長同時イメージング装置を用いた.上述の等吸収波長(1520 nm)および温度測定波長(1412 nm),非温度依存の等吸収波長(1442 nm)の3波長の組み合わせで吸収画像を取得した. (3)(1)で得た較正直線をもとに,波長1520 nmの吸収画像の画像構成によってNaCl画像変換を達成した.精度に関しては,今後見積もる必要がある. (4)反応界面および拡散界面と思われる領域において,特異な吸光度変化が見られた.これは,溶液間界面の影響または時間的な溶液混合状態の変化に原因があるものと考えている.この原因を究明するため,溶液界面の観察や混合による吸収スペクトルの時間変化の観察を検討している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,水と1種類の溶質の拡散を対象とした温度・濃度の同時イメージングを行う予定であったが,前年度にすでに達成したため,本年度は,2種類以上の溶質存在下の反応拡散系で可視化と現象解析に取り組んだ.対象水溶液(塩酸,水酸化ナトリウム,塩化ナトリウム)の吸収スペクトル測定による各溶液の吸収特性の調査,溶質濃度と光吸収の較正直線の取得,および吸収イメージングシステムを利用した生成塩濃度の可視化と定量化を達成した.反応拡散系の調査に関しては課題も多いが,計画書に記した予定は達成しているため,概ね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
中和反応系の拡散反応の理解には,中和熱による温度上昇も把握する必要があるため,取得したスペクトルの多変量解析から温度画像構成のための較正曲線の作成および波長の選定を検討する. また,これまでは溶質の拡散という立場からフィックの拡散法則をもとに考察を行ってきたが,酸塩基輸送反応はイオン由来の輸送現象である.したがって,電位勾配の項を含めたネルンスト・プランク式をもとに実験の考察および解析モデルの構築を行い,調査をすすめる.
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Research Products
(5 results)