2015 Fiscal Year Annual Research Report
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14J06527
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
櫻井 伸行 岩手大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 家畜 / 初期胚 / 組織分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、家畜の効率的な育種改良および増産に資する知見の収集を目的に、ウシ初期胚の組織分化を制御する分子基盤の解明を試みている。受精後、複数回の卵割を繰り返した胚は胚盤胞期へと発生する。その過程で細胞は将来胎児を形成する内部細胞塊(ICM)と胎盤を形成する栄養膜細胞(TE)の2つの組織に分化する。マウス胚ではTead4と呼ばれる転写因子が複数のTE分化関連遺伝子の発現を促し、TE形成において重要な働きを担うことが知られている。一方のウシ胚では、TEAD4に関する知見が少なく、その詳しい働きは不明である。これまでにRNA干渉法を用いてウシ胚に対するTEAD4発現抑制を行った結果、マウス胚とは異なり正常なTE形成が認められた。そこで本年度は、TEAD4発現抑制がウシ胚のTE分化関連遺伝遺発現におよぼす影響について検討を行ったが、対象とした遺伝子の発現量に関してはいずれもTEAD4発現抑制の影響は認められなかった。この結果は、ウシ胚ではTEAD4がTE分化制御の必須因子ではないことを示唆しており、マウス胚とウシ胚ではTE分化を制御する分子基盤が大きく異なる可能性が考えられる。一方で、各発生ステージにおけるTEAD4の発現動態を解析した結果、核でのタンパク質の局在やmRNA発現量の上昇は桑実期以降に起こっており、TEAD4はこの発生ステージ以降において何らかの働きを担うことが示唆された。また本年度は、ICMから分化する胚盤葉上層および原始内胚葉の分化制御を担う分子基盤の解明を目的に、この分化への関与が有力視されるFGF4の発現を抑制し、胚発生への影響について検討した。ウシ胚に対するFGF4の発現抑制は、胚盤胞期への発生を阻害した。今後は、FGF4が組織分化を制御する分子基盤にどのように関与しているのかについて詳細に検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は順調に実験を遂行し、これまでに実施してきたTEAD4関連の研究を完了することができた。また次の課題として、胚盤葉上層および原始内胚葉への分化を制御する分子基盤の解明を目的に、FGF4発現抑制実験にも着手しており、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス胚において、胚盤葉上層および原始内胚葉分化に関与する因子として注目されているのがNanogおよびGata6である。両因子は、はじめ全てのICM細胞で共発現しているが、次第にいずれかの発現のみが消失し、ICM内でNanog発現細胞とGata6発現細胞がモザイク状に分布するようになる。その後Nanog発現細胞は胚盤葉上層へ、Gata6発現細胞は原始内胚葉へと分化するが、マウス胚ではこの前駆細胞のモザイク状分布を制御する機構にFGFシグナルが関与することが知られている。Fgf4遺伝子欠損胚では全てのICM細胞がNanog発現を呈し、Gata6発現は消失する。一方、体外発生培地へのFGF4添加はNanog発現を消失させ、全てのICM細胞においてGata6を発現させる。このことからICMにおけるFgf4の発現バランスがNanogおよびGata6の発現バランスを制御する上で重要な役割を担うと考えられるが、Fgf4が胚盤葉上層および原始内胚葉への運命決定を司る因子であると実証した研究は未だ報告されていない。また、こうした研究はウシ胚ではほとんど行われておらず、ウシ胚ではこの分化を制御する分子基盤について詳細は不明である。そこで平成28年度はウシ胚における胚盤葉上層および原始内胚葉分化を制御する分子基盤の解明を目的に研究を遂行する。具体的には、ICM内におけるFGF4発現バランスを人為的に制御し、それがNANOGおよびGATA6の発現局在性におよぼす影響を検討する。それによってFGF4の発現バランスがNANOGおよびGATA6の発現バランスを決定づけていることを実証する。
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Research Products
(2 results)