2014 Fiscal Year Annual Research Report
魚類由来反磁性結晶のDNA固定による光学素子化と磁気マニピュレーション法の構築
Project/Area Number |
14J06583
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
水川 友里 広島大学, 先端物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | グアニン結晶 / 磁場配向 / マイクロミラー / 核酸塩基 / DNA / 生体由来 / 磁気マニピュレーション / 反磁性磁化率異方性 |
Outline of Annual Research Achievements |
・DNAとグアニン結晶間の相互作用の発見 グアニン結晶とDNAとの相互作用を調査する基礎実験を行った.グアニン結晶はキンギョから採取したウロコに付着した色素胞細胞から抽出した.DNA溶液は,サケ精液由来DNA粉末を沸騰した蒸留水に溶解させて使用した.上記2つの溶液を混合し,素早くチャンバーに封入してから水平磁場下(450 mT)で顕微鏡観察を行った.結果,DNA溶液を混合したサンプルではDNAが存在することでグアニン結晶がガラス基板に固定され,水平磁場を印加しても磁場配向現象は生じなかった. ・DNAジョイントを利用したグアニン結晶によるマイクロミラー構築とその磁気制御 DNAとグアニン結晶の相互作用を利用して結晶とガラス基板をつなぎ,磁場によって結晶角度を制御することが可能なマイクロミラーを構築した.作製したサンプルに永久磁石で鉛直磁場(480 mT)を印加した.この鉛直磁場により,グアニン結晶側面部分とガラス基板をDNAにより接着させた.これより,鉛直磁場を用いた結晶の磁場配向により,結晶によるマイクロミラーを構築する手法を確立した.また,作製したマイクロミラーに水平磁場(450 mT)を印加して,結晶角度を磁場配向により制御した. ・SPring-8と京都大学(共同研究)でのグアニン結晶に対する高輝度赤外分光 グアニン結晶の光学特性の詳細をSPring-8の高輝度赤外放射光分光FTIR(BL43IR)と京都大学の全反射吸収分光(ATR)法を用いて調査した.SPring-8での実験では,キンギョのウロコから抽出したグアニン結晶の長軸に対し,0度または90度の赤外偏光で分光し,京都大学のATR分光実験では,グアニン結晶集団の長軸を入射光に対して0度または90度回転させて分光を行った.これより,結晶のN-HおよびC=O結合の分子振動を検出できた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,1年目はDNAとグアニン結晶の相互作用を検証し,その結合メカニズムを解明するため,蛍光修飾DNAを用いて蛍光顕微鏡で観察実験を行う予定であった.これより,DNAとグアニン結晶の相互作用を検証したところ,ガラス基板にグアニン結晶がDNAで吸着することで磁場配向が阻害されることを見出した.また,DNAとグアニン結晶の相互作用の検証実験の延長で,DNAを混合したグアニン結晶サスペンションをチャンバーに封入後,素早く鉛直磁場を印加しつつ冷却したサンプルを光学顕微鏡で確認したところ,屏風型マイクロミラーの雛型ともいえる,水平磁場でミラー角度のコントロール可能なグアニン結晶ミラーを作製することに成功した. 指導教官からも,当初の実験計画予定より進展がかなり早く,本研究の目的であるDNAによるグアニン結晶の光学素子化のための結晶組織化・集積化にほぼ成功していると評価して頂き,これからの実験では,当初の計画であったグアニン結晶表面のどの部位にDNAが結合しやすいのかを検証する実験やパラボラ型・屏風型マイクロミラーの作製実験に加え,研究計画に囚われない新たな現象を捉える実験も行うように指導頂いた.
|
Strategy for Future Research Activity |
2014年度では,グアニン結晶とDNAとの相互作用を調査する基礎実験を行った.結果,DNAによってグアニン結晶をガラス基板に固定することができ,また目に見えないDNAを検出することが可能であることを明らかにした.しかし,この相互作用のメカニズムが吸着作用か水素結合かは解明できるには至らなかった.また,グアニン結晶表面においてDNAがどの部位に結合しやすいかも解明されていない.そのため,今後の実験では蛍光修飾した特異配列DNAを用いて結晶の蛍光顕微観察実験を行う必要がある.PCRで増幅した蛍光修飾オリゴヌクレオチドを結晶と相互作用させて,蛍光顕微鏡にて蛍光観察を行う.また,オリゴヌクレオチドの配列は,G・C・T・Aそれぞれのみの配列またはG・CのみとT・Aのみの配列を用い,どの配列が最も結合しやすいかも解析を行う予定である.これらの実験は,大阪大学の民谷研究室で指導を受け,実験を行う予定である. また,本研究の目的であるパラボラ型・屏風型マイクロミラーを作製するため,DNAによりガラス基板に固定したグアニン結晶ミラーを複数枚かつ磁場で1列に整列させ,組織化する方法を構築する予定である.境界上に集積するというグアニン結晶の自己組織化特性を利用して,複数のグアニン結晶ミラーを境界上に1列に整列させた上で,DNAでガラス基板に固定する.具体的には,5ミクロン間隔で作成した100~500ナノメートル深さの溝をガラス基板上に作製し,溝にDNAを流し込んだ状態で鉛直磁場を印加しつつ,上からグアニン結晶を撒く.これより,パラボラ型・屏風型マイクロミラーの雛型を構築する.さらに,永久磁石と電磁石用X-Yピニオンレール(回転台とレールを組み合わせた光学顕微鏡用装置)を用いて,精密な磁力線・光入射方向制御を可能とした上で,DNA固定光反射モデルの作成を行い,整列制御・光反射制御を行う予定である.
|
Research Products
(13 results)