2014 Fiscal Year Annual Research Report
低炭素製鉄を実現する新規鉄鉱石予備処理プロセス原理の創成
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14J06600
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤野 和也 東北大学, 環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 鉄鉱石焼結プロセス / 二酸化炭素排出量削減 / 鉄酸化熱利用 / 充填層中酸化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日本の二酸化炭素排出量削減のために、化石燃料使用量を削減した焼結鉱製造プロセス原理の創成を目的としている。そのために各種凝結材の反応性の把握と実際に使用した際の構造変化への影響が非常に重要である。そこで、研究実施計画では焼結条件におけるマグネタイトや部分還元で作製したウスタイトなどの使用時のこれらの特性を検討するとした。今年度は各種凝結材の反応挙動と単純な状態における充填層中の酸化挙動の検討を画をしており、実際に実行した。 鉄系凝結材の酸化速度を焼結鉱製造プロセスで高温となる短時間において検討した結果、1000-1300°Cの生成物層が固相の場合の酸化反応は放物線則に従い、アレニウス則に従う酸化速度定数を導いた。 鉄系凝結材をアルミナ球充填層中で予熱後、N2-21%O2ガス雰囲気下で酸化させた結果、予熱温度900°C以上で融液生成が確認され、酸化反応が継続した。融液生成と酸化反応継続の関係について検討するために予熱温度900°Cにおいて、酸素消費の実測値を鉄、ウスタイト、マグネタイトの固相を介した場合の酸化速度定数、ガス層への抜熱、酸化による発熱を考慮し導出した計算値と比較した。酸素消費の実測値は計算値よりも大きく、融液が生じた場合の酸化反応速度は固相を介した場合と比較し大きいことが確認された。 この結果に基づき、鉄源の液相生成の促進による反応率向上を検討した。金属鉄粒子表面に酸化時に鉄酸化物より低液相線温度の化合物が生じるよう調整した組成の粉末を付着させた試料を作製し、前述の実験と同様の条件で予熱温度900°C、アルミナ球充填層中で酸化実験を行った。この粒子は、金属鉄単味と比較して高い酸素消費速度、反応完了後の反応率を示した。以上から、融液生成による鉄系凝結材の反応性向上の可能性を見出すことができ、熱源として効果的に使う方法を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、日本の二酸化炭素排出量削減のために、化石燃料使用量を削減した焼結鉱製造プロセス原理の創成を目的とし、そのための各凝結材の反応挙動を検討する予定であった。研究計画において初年度において、バイオマス炭や鉄系の凝結材に関する基礎的な酸化速度の測定および充填層中での酸化挙動の検討を予定していた。 この予定に基づいて達成度を考慮した場合、バイオマス炭を使用したものに関しては、単味での酸化速度測定を行わず、充填層中での酸化のみを検討し、進捗は十分ではない。 しかし、鉄系の熱源を用いたものに関しては、鉄薄板試料から作製したウスタイトを用いてウスタイト、マグネタイトの酸化速度の測定を行い、放物線則に従う範囲における酸化速度定数を導いた。加えて、充填層中で鉄系凝結材を単味で酸化させた場合の挙動についての検討し、融液生成時の酸化が反応の継続のために重要であることを明らかにした。このように鉄系の凝結材に関しては、凝結材の組成変更を行った条件以外は予定していた条件に関する知見を得ることができた。 これらに加えて、融液生成が重要であるとの知見に基づき、充填層内での融液生成を促進する条件についての検討を開始している。その結果、融液生成を付着粉層などによって促進することで鉄系凝結材の酸化が促進されることや、付着粉層の組成によって酸化速度が変化するなどの一定の知見を得ることができた。 以上、バイオマス以外の鉄系の熱源に関する研究は予定よりも進んでおり、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は基本的に研究計画に基づき遂行する。まず、初年度に行わなかったバイオマス炭の基礎的な挙動について明らかにし、その使用が焼結プロセスに与える影響を明らかにする。加えて、二年目に予定していた複数の種類の凝結材を混合した場合の反応挙動についての検討と充填粒子を融液が生成するものに変更した場合についての検討を行い、鉄鉱石焼結プロセスに近い条件での鉄系凝結材の使用による影響を判断する。 研究を進める上での問題点として、様々な種類が存在するバイオマス炭から実験で用いるバイオマス炭の種類を決定する必要がある。これに関しては揮発成分の多いものと少ないものの二種を用意し、それぞれの基礎的挙動について検討を行う予定である。 炭材と鉄系の熱源を混合した条件で充填層中での酸化挙動については、バイオマスとの同時使用に関しては非常に複雑な反応が予想される。そこで、最初に単味での反応に関する知見の多いコークスとの同時使用を主体として行い、炭材との同時使用について検討することとする。充填層中でそれぞれの粒子を混合した場合だけでなく、実際のプロセスにおいて付着粉層内で想定されるような細かい粒子同士が混合された状態に関しても酸化挙動を検討し、炭材との近接配置による影響についても検討を予定している。 反応に寄与する融液量の定量化は困難が予想されるため、反応後試料を樹脂埋めし後、断面観察を行い融液部の面積から融液量を推定し、これと完全に溶融した場合の計算値を用いて融液量の影響については検討する計画である。 である。
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Research Products
(3 results)