2014 Fiscal Year Annual Research Report
コバルト錯体を基盤とした高効率光酸素発生触媒系の構築
Project/Area Number |
14J06604
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中薗 孝志 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 水の可視光分解 / 光酸素発生反応 / コバルトポルフィリン錯体 / 一重項酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
水の可視光分解を実用化へと導くためには、活性中心に用いる金属が安価で且つ高い活性及び耐久性を有する錯体触媒の開発が必須である。水の還元反応による水素発生を進行させるためには、水の酸化反応による酸素発生を同時に進行させ、4電子と4プロトンを水から引き抜くことが必要となる。 これまで酸素発生触媒研究の一環として、大環状効果による錯体耐久性の向上が期待できるポルフィリンを配位子に有した錯体CoTMPyP、CoTCPP、及びCoTPPSに着目し、研究を行ってきた。その結果、これらコバルトポルフィリン錯体が酸素発生触媒として非常に高い活性を有することを見出した。また、光触媒反応後の溶液から触媒由来の成分のみを単離し、ESI-MS 質量分析による同定を行ったところ、ポルフィリンのメソ位が開環した別のコバルト錯体種が検出された。これらの副生成物はポルフィリンのメソ位が一重項酸素による攻撃を受けて生成するポルフィリン錯体の開環生成物であると帰属した。 そこで本研究では一重項酸素による開環反応を抑制するためにアリール基の2位及び6位へフッ素を導入した新規錯体CoFPSを設計並びに合成し、機能評価を行った。結果、触媒耐久性、即ち触媒回転数(TON)が大きく向上し、それに伴って触媒回転頻度(TOF)が向上した。その最高値はTON = 570及びTOF = 1.1 /sであり、高い触媒活性を持つことが確認された。TOFが1.0 /sを超えるものは前例が少なく、CoFPSは極めて高活性な触媒に分類されることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究計画一年目の「高耐久性酸素発生触媒の開発」の達成を目的として研究を行った。 結果、コバルトポルフィリン錯体のアリール基の2及び6位にフッ素を導入した新規錯体CoFPSについての触媒機能評価を行い、錯体触媒の耐久性及び活性の大幅な向上に成功した。さらにその反応条件や触媒反応の律速段階、光酸素発生反応系中での一重項酸素生成挙動についての検討を行った。 さらにその成果は「Takashi Nakazono, Alexander Rene Parent, and Ken Sakai, "Improving Singlet Oxygen Resistance during Photochemical Water Oxidation by Cobalt Porphyrin Catalysts", Chem. Eur. J., 2015, 21, 6723-6726」として発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらに高活性な錯体触媒の明確な設計指針を得るために、酸化剤[Ru(bpy)3]3+とコバルトポルフィリン錯体の反応を追跡することで酸素発生反応機構の詳細な解析を行う。 反応機構解析には、Stopped-Flow法を用いて触媒反応中の吸収スペクトル変化を追跡し、得られる多波長スペクトルデータをSVD (Singular Value Decomposition)法を用いて解析する。この他、電気化学測定に基づくプルベーダイヤグラムの作成、ESRを用いた反応中間体の検出なども行い、多角的な視点から酸素発生反応機構の解明を試みる。最終的には得られた知見を活かした新規酸素発生触媒の開発を行い、その成果を発表する予定である。
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Research Products
(6 results)