2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J06653
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中分 遥 北海道大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 文化進化 / 集合知 / 社会心理学 / 意思決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在の人類が持つ技術・数学といった高度で複雑な知識体系は単一の個人が1世代で生み出すのが不可能なレベルにある。こうした高度で複雑な知識体系は世代から世代へと文化が伝承される過程で漸進的に改良された結果として生まれたものであり、この現象は累積的文化進化とよばれる (Tomasello, 1999)。しかし、集団の相互作用によって個人が生み出し得ない創発性が生み出される集合知のように、累積的文化進化によって生み出される文化は個人では決して達成できないものであり、複数の個人の間で伝達されることでのみ達成されるのか?本研究の目的は、モーゼのような長命な個人がどれだけ長い時間を費やしても達成しえない高い境地に至ることが伝達によって可能となるのか検討することである。 平成26年度は、これを検討するために計算論的に困難な課題が世代間伝達によって達成されるのか検討した。具体的な手法としては、コンピュータ・シミュレーションを用いた。シミュレーションでは、適応的意思決定の文脈で検討される手がかり学習課題を用いた。この課題は、最適な解の探索がNP困難であることが知られ(Schmitt & Martignon, 2006)、実験で参加者が用いた学習アルゴリズムを用いて学習を行っても、低いレベルで学習が停滞することが知られている(Dieckmann & Todd, 2012)。この課題に世代間で情報伝達を行うというプロセスを導入することによってどの程度最適解に近づくことが可能か検討した。シミュレーションの結果、世代間伝達の過程で情報の一部が失われることによって、むしろより高いパフォーマンスをあげることが示された。この結果は、世代間で情報が失われるといったプロセスがむしろ累積的文化進化に有利に働くことを示すものである。得られた結果は、平成26年度の社会心理学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の全体の目標は、情報を伝達する過程で、個人がいくら時間をかけても到達できない創発性が生じることを示すことにある。そのため、研究計画として①計算論的に困難である課題、②一度ある技術を達成するとそれが最適でなくても、そこから新たな技術を探索するのが困難となる他峰形適応度地形を用いた課題、の2つを検討することを予定しており、本年度は①に着手した。 具体的には、コンピュータ・シミュレーションによって検討を行った。計算論的に困難な課題として、過去の知見が蓄積されている手がかり学習課題を用いた。コンピュータ・シミュレーションで個人が長時間かけて学習を行う個人条件と一定期間学習すると次世代の個体へと情報を伝達し、情報を引き継いだ個体が学習を重ねて行く伝達学習条件の二つを検討した。その結果、数世代に股がる期間学習を行うと、伝達学習条件が個人学習条件を上回るといった結果が得られた。この結果は個人によって達成されない高いパフォーマンスが創発したことを示すものである。この結果は、平成26年度の社会心理学会で発表した。 発表後、コンピュータ・シミュレーションの妥当性を確認するため異なるプログラミング言語によって同様の結果が得られるのか検討し、その結果は一致した。そのため、本研究の結果は、論文として投稿するのに十分な成果であると考え、現在執筆に取りかかっている。これらの状況から、平成26年度の課題は達成されたと考え、達成度の評価として「(2) おおむね順調に進展している。」を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究全体として目標として、①計算論的に困難である課題、②一度ある技術を達成するとそれが最適でなくても、そこから新たな技術を探索するのが困難となる他峰形適応度地形を用いた課題の二つの検討を目指している。平成26年度に①計算論的に困難である課題を用いて検討を行い、伝達の過程によって情報量が減るにも関わらず、伝達を重ねることによってパフォーマンスが高まることが示された。 平成27年度はこの結果を執筆しながら次の課題に取りかかる予定である。その課題とは、②多峰形適応度地形において同様に確認されるか検討することである。用いる課題としては、コンピュータ上で矢尻を作成し、その利得が他峰形適応度地形としてあらわれる課題(Mesoudi & O'Brien, 2008)や、人工知能の分野で取り扱われる課題など、様々な課題を想定できる。平成27年度は、まずどのような課題が目標を達成するか検討するところからはじめる。研究はコンピュータ・シミュレーションに加え必要であれば実験研究を行う予定である。また、得られた知見と既存の知見とのマッピングを行うため、多峰形適応度地形という概念が一般的に用いられる生態学や人工知能に関する学会やワークショップなに参加する予定である。これらで、26年度得られた結果を発表しながら、関連する分野の専門家と議論を行うことで論文化を目指す予定である。
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Research Products
(2 results)