2014 Fiscal Year Annual Research Report
高活性ロジウム触媒を用いるジアリールスルフィド合成と変換反応の開発
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14J06735
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
市川 拓哉 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | ロジウム触媒 / ジアリールスルフィド / ノルボルネン / イオウ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は高活性ロジウム触媒を用いて、ベンゼンとイオウから直接ジフェニルスルフィドを合成することを目的とする。具体的には、ジフェニルスルフィドのC-S結合変換による非対称ジアリールスルフィド合成反応を開発し、多様なジアリールスルフィドをベンゼンとイオウから供給する一連の反応を開発する。本年度は、電子求引性置換基を1つのみ有するジアリールスルフィドの変換を伴う非対称ジアリールスルフィド合成反応を開発した。また、ロジウム触媒存在下イオウの反応性を調べる目的で、不飽和化合物へのイオウ原子付加反応を開発した。 ロジウム触媒を用いて、電子求引性置換基を1つ有する2種類の対称ジアリールスルフィド間でアリール交換反応が進行し、非対称ジアリールスルフィドを与えることがわかった。さらに、ジアリールスルフィドに末端アルキンを作用させると、C-C結合形成反応が進行し、ジアリールアルキンが生成することを見出した。条件を変えるとアルキンの末端炭素にジアリールスルフィドがα付加した三置換アルケンが生成することを明らかにした。これは、アルキンにジアリールスルフィドがカルボチオ化した生成物である。多様なジアリールスルフィド合成に加え、C-C結合形成をロジウム触媒的に行えることを示した。 次に、イオウを用いるノルボルネン誘導体へのイオウ付加反応を開発し、チイラン化合物を触媒的に生成することを見出した。本反応をシクロオクチン誘導体に適用すると、1,4-ジチインとチオフェン誘導体を触媒的に与えることがわかった。これらの反応を31P-NMRで追跡した結果、ロジウム触媒がイオウを直接活性化してRhHS2(dppe)2錯体が生成することがわかった。この錯体からイオウが基質に移動することを確かめた。以上、種々の含イオウ環状化合物をイオウとアルケンやアルキンから触媒的に合成する反応を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載したように、本年度にはジフェニルスルフィドのC-S結合の変換を伴う非対称ジアリールスルフィドの合成および変換反応の開発を行った。今回、電子求引性置換基を1つ有するジアリールスルフィドのC-S結合変換を伴う非対称ジアリールスルフィド合成反応を達成した。これに加えて、ジアリールスルフィドに末端アルキンを作用させることで、アルキンC-H結合とのメタセシス反応を経由するC-C結合形成反応と、アルキンのα-炭素へのカルボチオ化を経由するC-C / C-S結合形成反応が進行することを見出した。ジアリールスルフィドを用いる多様な変換反応を達成できた。加えて、イオウを直接用いる不飽和化合物へのロジウム触媒イオウ原子付加反応を開発し、種々の含イオウ環状化合物を触媒的に合成する反応を開発した。ここでは、ロジウム触媒が直接イオウを活性化してロジウムジチオ錯体を与えることを示した。これらは当初の計画以上の結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、イオウを用いたジフェニルスルフィドの合成反応および変換反応を達成する。触媒の活性をみながら、反応剤を工夫することでジフェニルスルフィドの変換を達成できると考えている。これを用いて多様な対称/非対称ジアリールスルフィドの合成反応に展開する。さらにジアリールスルフィドを他のC-ヘテロ元素結合に変換する反応を数多く開発する。ジアリールスルフィドから多様な芳香族化合物を合成する手法を確立する。 次に、イオウを用いるロジウム触媒反応を数多く開発し、より多くの知見を得る。現在、イオウを用いる付加反応においては、環歪みの大きな環状アルケンや環状アルキンで収率良く反応が進行しているので、より単純なアルケンやアルキンへのイオウ原子付加反応を開発する。当研究室では、ロジウム触媒を用いる様々な酸性度を有するC-H結合のチオ化反応を見出しているので、これらの知見をもとに、まず酸性度の高いC-H結合をイオウを用いてチオ化する反応を開発する。これを順次酸性度の低いC-H結合の反応に展開することで、ベンゼンのC-H結合を活性化し、イオウをイオウ源としてジフェニルスルフィドを直接合成する反応を開発する。これにより、ベンゼンから多様なジアリールスルフィドを合成する一連の反応を開発する。
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Research Products
(4 results)