2014 Fiscal Year Annual Research Report
電気機械的結合したマルチスケール大腿モデルの研究開発
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14J06745
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
ゴメスタメス ホセディビッド 千葉大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | Anatomical Model / Bioelectrical Model / Nerve Model / Electrical Stimulation / Model Validation / Human-phantom tissue |
Outline of Annual Research Achievements |
皮膚表面より電気刺激(経皮的電気刺激,Transcutaneous Electrical Stimulation:TES)を筋に与えることで,筋収縮を引き起こし,中枢神経系の障害により失われた歩行や物体把持といった下肢,上肢の運動機能を再建する方法はこれまで多く研究されてきている.TESにより生じる筋活性は,生体組織の電気的特性や幾何学的特性に依存するため,運動機能再建を行うためには,これらを考慮して刺激パラメータや刺激位置を決定する必要がある.
そこで,本研究では,TESにより生じる筋活性を再現するため電気生理特性を考慮した解剖学的なモデルを提案し,シミュレーションを行った.効率的かつ効果的なモデルを特定するため,モデルのパラメータを変更して,各モデルの電気的特性,幾何学的特性,神経活動の予測精度,計算効率を比較した.さらに,生体の電気的特性を模したファントムを作成し,生体-ファントムカップリング実験により,モデルの幾何学的・電気的特性の簡略化が可能であるかを検証した.その結果,簡略なモデルでも神経筋活動を表現できることを確認した.以上より,本研究により生体組織の電気的特性,神経筋活動,電気刺激間の関係性の系統的な検証を行うことが可能となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度取り組んだ課題は2点に大別される.1) 神経筋接合部を有する生体モデルの作成,2) 画像処理と生体等価ファントムを用いたモデルの信頼性,妥当性の検証.
具体的には,電気的特性,幾何学的特性に関するパラメータを変更し,より効率的かつ効果的なモデルの検討を行った,電気的特性に関しては,生体組織の電気的特性の周波数依存性を考慮するDispersive Modelと考慮しないResistive Modelを作成し,その予測精度,計算効率を比較した.さらに,生体と同様の電気的特性をもつファントムを用いてDispersive ModelとResistive Modelの信頼性,妥当性を検証した.幾何学的特性に関しては,MRIデータから作成した人体を模倣したモデルと,単純な円筒形モデル,並列層モデルを作成し,これらの単純なモデルと詳細な人体モデルを比較することで,それらの違いやモデルの簡略化の可能性について検証した.これらの検証により,予測精度と計算効率に応じたモデルの電気特性表現,幾何学表現を簡略化するための条件が明らかとなった.その後,生体‐ファントムカップリング実験を行い,神経活性モデルの妥当性を検証した.本実験により,生体組織の誘電分散特性,神経・筋活動,入力である電気刺激の各要因の相互の関係性を系統的に明らかにすることが可能となった.
以上が主たる成果であるが,研究を推進した結果,加えて以下の副次的な成果を得た.まず,幾何学的特性を考慮したモデルを作成するため,MRIで取得した構造データから幾何学的特徴を抽出し,3次元再構築する方法を確立した.さらに,筋活動を検証するため,超音波画像より筋肉の特徴量を抽出・識別する手法を提案した. 以上より,研究は順調に進んでいると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度取り組む課題は,以下の2つの課題に大別される.1)モデルの改善,2)モデルの神経疾患の病態理解への応用である.1)に関しては,筋構造の調査により運動終板領域を決定し,運動神経繊維と筋繊維とが接合する運動終板分布も考慮した生理的モデルの実現を目指す.さらに,motor unitが支配する領域とその神経発火パターンをモデルに組み込む.2)に関しては,これまでのモデルの形態学的特性を変更,改善することで,神経障害の特性を表現可能なモデルの作成を目指す.さらに,神経伝導速度検査の結果得られる筋電図や運動閾値と,モデルから算出した筋電図,運動閾値等を比較することにより,モデルの妥当性,信頼性を検証する.モデル作成後には,これを用いて神経障害と筋電図との関係性を解析し,神経障害の病態理解に寄与することを目指す.
当初の予定では,筋の変形に関して,リアルタイムの筋収縮を考慮したモデルを作成予定であったが,今年度は筋の変形に関しては静的な状態のみを考慮してモデルの作成を行う.これは,神経障害の特性を持つモデルの作成を優先して実施するためである.本変更により,神経障害の病態理解と,モデルの改善がより進捗すると考える.
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Research Products
(8 results)