2014 Fiscal Year Annual Research Report
自転運動を考慮した大質量星進化・超新星元素合成の網羅的計算
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14J06748
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 亘 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 恒星進化 / 元素合成 / 超新星爆発 / 数値計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度の前半では宇宙初期に存在した初代星における元素合成についての研究を遂行した。重元素の合成以前に誕生した初代星は重元素をまったく含まないため、その進化の解明は恒星進化理論における興味深い問題になっている。私は初代星の進化過程に自転運動が与える影響を考慮し、進化中におきる元素合成にどのような結果が生じるのかを調べた。研究の成果として、① 大質量星のヘリウム層においてマグネシウムやシリコンなどのアルファ核種が合成する事 ②回転する大質量星のヘリウム層においてナトリウムやアルミニウム等の奇数核種が合成する事 が判明した。またそれを利用して、③観測される金属欠乏星のもつ元素分布を解析する事で、初代星の基本的性質を制限できる可能性を指摘した。 26年度の後半では、主として恒星進化コードと爆発計算コードの開発・改良を行った。恒星進化コードではコード根幹部分の定式を変更し、計算の高精度化・安定化を計った。これにより大量の恒星進化計算を行う上での高速化が期待できる。また自転運動による不安定性について、数値計算の基礎方程式を得るべく解析的な研究を行った。爆発計算コードには新たに元素合成によるエネルギー生成の効果を加えた。爆発中に生じる元素合成反応は領域の組成・密度・温度により大きく性質を変える。特に高効率でエネルギーを放出する酸素燃焼反応と、高温下で統計平衡に至るNSE (Nuclear statistic equilibrium)の取り扱いは計算の精度が落ちやすく扱いが難しい。そのような計算を安定に追うために、適切な時間ステップの取り方や考慮する核種数の選び方について調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進行は順調である。大きな理由として、回転星の進化過程を最期まで追う計算が可能となり、その第一報として初代星における元素合成計算の結果を出版できたことが挙げられる。数値シミュレーションを主とする研究では計算コードの不具合からシミュレーションが行えない自体になりがちであり、それが研究の進行を妨げる大きな理由になる。26年度中に成果を出す事の出来るコードの開発に成功しており、次年度以降の研究進展が望める。また進化計算以外でのコード開発も順調である。26年度中には、爆発計算を行うための流体計算コードに、元素合成反応の効果を組み込む事に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
一つ目の目標は網羅的な恒星進化計算を行い、爆発計算や元素合成計算のために用いる初期条件のデータセットを準備する事である。観測との比較が可能で最も重要である太陽組成の計算を最優先とし、順次、マゼラン雲組成などの低金属量星の計算に移っていく。初年度に計算した初代星のデータと合わせ、合計数百モデルの計算を予定している。 二つ目の目標は、爆発的元素合成計算に用いるための流体計算コードの開発および試計算である。26年度には流体計算に元素合成反応を組み込む事に成功した。その他にも、爆発中に成長する乱流拡散の効果などを組み込む予定である。コードの試計算として、140-300太陽質量の大質量星の至るペア不安定型超新星爆発の計算を行う。
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Research Products
(5 results)