2015 Fiscal Year Annual Research Report
自転運動を考慮した大質量星進化・超新星元素合成の網羅的計算
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14J06748
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 亘 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 恒星進化 / 大質量星 / 超新星爆発 / 回転星 |
Outline of Annual Research Achievements |
主な進展は二点である。 一点目は一次元球対象爆発コードの開発と、それを用いた対生成不安定型超新星爆発の計算である。コード開発は既存の一次元隠的ラグランジアン流体計算コードに、核反応ネットワーク及び核反応による発熱を組み込むことを行った。核反応による発熱の効果はこれまでエネルギー保存式による定式化が知られていたが、今回新たにエントロピー式を用いた定式化を導出し、これを用いた。爆発計算の結果、対生成不安定型超新星爆発となる大質量星の質量域が得られ、正しい定式のもとでは近似的定式と比べて爆発の上限質量が約86% に減少することがわかった。この研究成果は Monthly Notices of the Royal Astronomical Society に掲載された。 二点目は自転星進化理論の観測的検証についての研究である。この研究は、日本-スイス若手研究者交流事業の採用者としてスイス・ジュネーブ大学に5ヶ月間の長期滞在を行った際にされたもので、ジュネーブ天文台所属の Georges Meynet 教授及びその研究室メンバーとの共同研究である。現状の自転星進化理論には多くの不定性が存在する。そのため自転星進化を数値的に扱う恒星進化コードにも大きく二種類の取り扱いがなされており、それぞれの比較はこれまで行われてこなかった。我々は二種類の恒星進化コード(スイスコード及び日本コード)を用いた結果の比較を行い、それぞれの自転星進化の結果がより一般には「一様回転型進化」と「差動回転型進化」とに分類できることを見つけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進展は順調である。 今年度の主な進展は、爆発する大質量星の中でも最も重い質量域に相当するペア不安定型超新星の親星及びその爆発の計算を遂行した点である。これにより、申請者がこれまでに行っている「電子捕獲型超新星」「鉄コア重力崩壊型超新星」の研究とあわせて、爆発する大質量星の質量域のほぼ全域を考慮できるようになった。加えての進展は、スイスで行った回転星の影響についての研究である。単独星の進化を考える上で自転の効果は重要であり、本年度の進展により、その効果の数値計算上の取り扱いがより現実的に行えるようになった。すなわち、これまでの研究により、本研究の最終目標である「回転大質量星の網羅的計算」を行う上で必要な基礎を十分に整えることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度である次年度には、研究全体をまとめるべく大質量星の全質量域・可能な回転速度域を覆った網羅的大質量星進化計算を行う予定である。特にこれまで研究例の少なかった、ブラックホールを形成するような大質量星の計算に注力する。ブラックホールの形成過程及び形成直後の周囲のガスの力学的状態には、崩壊前の親星の角運動量分布が大きな影響をもつ。回転大質量星の進化において、どのような現象が崩壊直後のブラックホール周りの角運動量に影響するのか調査する。 これまで行ってきたコード開発の過程で、計算を不能にするいくつもの問題をすでに解決してきた。次年度の研究を行う上で特別解決困難な問題がおきることは想定していない。
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Research Products
(5 results)