2014 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外面分光ユニットの開発と、それを用いた銀河形成・進化機構の解明
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14J06780
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北川 祐太朗 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 面分光 / 超精密加工 / 銀河形成進化 / IFU |
Outline of Annual Research Achievements |
面分光ユニット(Integral Field Unit:IFU)を用いた観測は空間2次元、波長1次元の計3次元データを同時に取得でき、銀河形成進化の解明に新たな知見をもたらしつつある。本研究では、すばる望遠鏡で観測可能な近赤外イメージスライサー型IFUの開発を国内で先行しておこなっており、今年度は以下の成果を挙げた。 [1]様々なアルミニウム材の加工試験と冷却時の形状歪み測定を独自に進め、低温下で最適な鏡材を見出した。本研究で開発を目指している近赤外線用IFUは低温(~80K)で用いるため、冷却下で高い面精度を達成する必要がある。その際、問題になるのがミラー母材(e.g. アルミニウム合金)とめっきとの熱膨張係数の差異による低温下での形状歪みの発生であり、定量的な評価を行い最適な鏡材を見出すことが重要である。そこで低温形状歪み測定システムを構築し、さまざまなアルミニウム合金で系統的な調査を行った。その結果、Siを高濃度ドープした特殊アルミニウム合金において、大局的な歪みが抑制され、低温環境下で要求精度を満たすことを定量的に実証した。 [2] 超精密切削加工技術をイメージスライサー型IFUの光学素子製作に応用するための技術蓄積をおこない、その成果として25chスライスミラーアレイを製作した。IFUに必要な光学素子は複雑な形状を有したミラーアレイのため、これらを近赤外域で求められる精度(表面粗さ 10 nm rms以下、形状誤差 100 nm PV以下)で製作することは非常にチャレンジングな課題である。そこで今年度はすべての基礎となるスライスミラーの製作に重点を置き、そのための試作、評価と加工方法の最適化をおこなった。本研究による超精密加工技術の蓄積と加工パラメータの最適化は、本番用ミラーアレイ加工に用いられるレベルにほぼ達しており、最終的な成果として25chスライスミラーを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は昨年度に光学設計を完成させた近赤外線用イメージスライサー型面分光ユニット(IFU)の光学素子を実際に製作するための、超精密切削加工技術の検討と、それを用いた試作を積極的に進めた。 本研究のIFUはすばる望遠鏡で初の近赤外面分光観測を可能とするものであり、その光学設計解について国際研究会(SPIE)で報告をおこなった。海外の他グループとも情報交換をおこない、本研究の認知度を高めた。 開発を目指している近赤外線用IFUは低温で用いるため、液体窒素温度まで冷却した時も高い面精度を達成する必要がある。そこで理化学研究所の超精密加工グループと密接に連携を取り、特注ダイヤモンドバイトを用いた様々な特殊アルミ材の加工試験と冷却変形試験を独自に進めた。その成果として、最終的にキーとなる光学素子3つのうちの一つである25面のスライスミラーの製作に成功した。これは、本研究の目指すIFUを実現するための大きな一歩である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は本研究が目指しているIFU開発の内、光学素子製作の基礎となる超精密加工技術の蓄積と評価に注力した。前項で述べたように、これら要素技術開発に関して一定の成果を挙げることに成功した。そこで次年度では、これを更に推し進め、残りの光学素子(瞳ミラーアレイ、スリットミラーアレイ)の製作に着手する。具体的には、光学素子の鏡材として、今年度の評価試験によって見出された、低温下でめっきと組み合わせた場合にもっとも形状歪みが抑制される特殊アルミニウム合金を採用する。当初、懸念されていた入手性に関しても、ブロック(350 x 350x 500 mm)で購入できることをすでに確認しており、問題は解消されている。 更に光学素子の開発と平行してIFUの支持構造の設計、製作もおこなう。こちらに関してはすでに初期検討を進めており、軽量化をはかりつつ光学素子を堅牢に保持する構造を目標として設計を進めている。 ミラーアレイの製作とその支持構造体が完成したところで、両者を組み上げて実験室系での光学評価も行う予定である。
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Research Products
(6 results)