2014 Fiscal Year Annual Research Report
都市的"性"様式のグローバル展開とそれを基点とするグローバルシティ研究の新視座
Project/Area Number |
14J06783
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
熊田 陽子 首都大学東京, 人文科学研究科, 特別研究員(SPD)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | 都市的“性”様式 / 性風俗世界 / グローバルシティ研究 / トランスナショナルな連結 / 文化人類学 / 民族誌 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度採用分日本学術振興会特別研究員申請書の「研究の目的」及び「研究計画」の記載内容に従って平成26年度に行った研究実績は以下の通りである。【性風俗世界を通じたアムステルダムの都市的“性”様式に関する調査研究】として、アムステルダムで予備調査と面接調査を実施した。予備調査では性労働を専門とする現地研究者の協力を受けながら、主に「飾り窓地区」と呼ばれる赤線地帯の詳細を把握した。(元)性労働者を対象とした面接調査では、性労働者の視点を重視した実証分析に不可欠な個人の具体的な経験の解明に努めた。一部の性労働者と更に重ねたやり取りの中では、親族を中心とするネットワークの実態など、本研究の中核概念である「性風俗世界」をより包括的に捕捉するための重要な視点を得ることができた。【性風俗世界を通じたシンガポールの都市的“性”様式に関する調査研究】では、主に性労働者が集中するゲイラン地区で予備調査を行った。更に南洋理工大学にて本研究の内容と鍵となる諸概念について講演を行った。【家族の性を通じた東京の都市的“性”様式に関する調査研究】では、4組の夫婦に対して面接調査を開始しデータを収集した。【都市的“性”様式のグローバル展開に関する研究】では、本研究の基礎であり着眼の土台でもある東京都市部の適法的性風俗店における参与観察調査の成果を精査し、都市的“性”様式のトランスナショナルな連結とそのグローバル展開の分析の核となる、諸関係の構築の方法とその実態について新たな角度から分析を深化させた。更に当初の計画にはなかったが、東京の性風俗店で海外の客が増加している実態を受け、当該性風俗店で海外からの利用者を対象とした調査を実施し、成果公表の準備を行った。平成26年度は以上を中心とした調査研究を行いながら、学会誌への発表1件及び学会等での発表3件を成果として公開した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【性風俗世界を通じたアムステルダムの都市的“性”様式に関する調査研究】と【性風俗世界を通じたシンガポールの都市的“性”様式に関する調査研究】については計画通りに研究を遂行することができた。これに対して【家族の性を通じた東京の都市的“性”様式に関する調査研究】については、平成26年度当初に計画したよりも低い面接調査数の実施に留まった。しかし東京の性風俗店を利用する海外からの客に関する研究では、平成26年3月まで行ってきた東京都市部性風俗店を通じて新たなデータを獲得することで、東京、アムステルダム、シンガポールの3都市の比較から本研究を深化させるうえで当初予想していなかったデータを得ることができた。これらを総合して現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」と評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は東京、アムステルダム、シンガポールにおいて行った各調査の成果を踏まえつつ更に調査を継続して、本研究の課題の解明に努めていく。なお、平成26年度に実施した調査研究成果を組み入れた成果の公表に向けて、平成27年度に開催される学会等のパネル企画公募(英語1件)及び研究発表論文公募(英語2件日本語1件)に申請し、査読審査の結果、いずれも採択の結果を得ている。特に企画パネルにおいては、シンガポールの現地アドバイザーの参加が決定している。今後は第一年度目の研究遂行の過程で基盤を形成することができたオランダおよびシンガポールの先達研究者たちとのネットワークを一層堅牢なものに発展させながら、彼らを日本に招聘してセクシュアリティとジェンダーの観点からグローバルシティ研究を再考することを目的とした国際シンポジウムを企画立案・実施することを視野に入れて第二年度目以降の研究を展開したいと考えるに至っている。
|
Research Products
(7 results)