2015 Fiscal Year Annual Research Report
都市的"性"様式のグローバル展開とそれを基点とするグローバルシティ研究の新視座
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14J06783
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
熊田 陽子 首都大学東京, 人文科学研究科, 特別研究員(SPD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 都市的“性”様式 / 性風俗世界 / グローバルシティ研究 / トランスナショナルな連結 / 文化人類学 / アムステルダム / 東京 / 民族誌 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度採用分日本学術振興会特別研究員申請書の「研究の目的」及び「研究計画」の記載内容を、平成27年6月25日に行われたSPD研究発表会を通じて得た主任研究員の助言に従って修正した。その結果平成27年度は、主な調査活動をアムステルダムと東京の性風俗世界に絞って、以下の通り調査研究を実施した。 「性風俗世界を通じたアムステルダムの都市的“性”様式に関する調査研究」として、いずれもアムステルダムで、性労働者と対象とした面接調査と参与観察調査、オランダで全国紙として展開される新聞を中心とした資料収集及び分析、性労働者の住居での住み込み調査に向けた今後の調査準備等を行った。特に、多くの性労働者が国外出身者である事実を踏まえ、親族を中心に形成される諸関係の実態解明を念頭においた調査と、性労働に影響を与えるオランダの政策等の分析を重点的に実施した。「都市“性”様式のグローバル展開に関する研究」としては、国際学会におけるセクシュアリティ研究のパネル組織と研究発表、国際学会を通じた研究者ネットワークの構築、性風俗世界を通じた東京の都市的“性”様式に関する調査研究等を行った。なお、東京の都市的“性”様式に関する調査研究の成果は、平成28年度12月に学術単行書として出版されることが平成27年度に決定している。その他の実績には、セクシュアリティ研究の立場から行ったシンポジウムでの指定ディスカッサントやゲストスピーカーとしての活動がある。 平成27年度は以上を中心とした調査研究活動を実施しながら、学会誌への発表2件(平成28年度の出版含む)及び学会等でのパネル組織と口頭発表6件(その内、国際学会における英語での実施は4件)を成果として公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度はSPD研究発表会を通じて得た助言をもとに計画を修正し、着実に実行することができた。本研究が「おおむね順調に進展している」と考える理由について、研究の進捗状況と研究成果の公表状況の2点に分けて記す。第一に、研究の進捗状況において特に有益であったのは、平成27年度は、性労働者と元性労働者に対する聞き取り調査が着実に実施できたことに加え、その家族、親族も調査対象に据え実際に臨地調査を行う可能性が高まった点である。これにより、本研究が解明を目指す都市的”性”様式のグローバル展開について、オランダ・アムステルダムと性労働者の出身国というより広い視野から捕捉し議論する実現性が確保された。更に、オランダ語の主要な諸新聞を中心とする一次資料から性風俗世界をめぐる政治の分析に着手、遂行することで、性労働者の日常というミクロな次元の調査を主軸とする本研究の実証性を高め、より説得性の高い議論を展開することに近づいた。第二の研究成果の公表状況において最も大きな収穫は、性風俗世界で働く女性の視点から東京の都市的”性”様式の一端を実証的に解明した成果が、平成28年12月に学術的単行書として確実に刊行される運びとなったことである。また、国際学会でのパネル企画と口頭発表を実施する過程では、東京での調査研究成果の公表を行うと同時に、アムステルダムでの調査研究で得た知見を交えて議論の精緻化に努めることができた。こうした活動を通じて、平成28年度にアムステルダムで得た成果に基づいて学会誌等で発表する素地が整ったと考えている。更に平成27年度は、平成26年度を通じて構築した海外研究者との関係を発展させ、実際に国際学会のパネルで互いに発表を行い、議論を行うこともできた。こうした具体的な協働活動は、国際的研究者ネットワークを強固にするという意味で非常に有意義であったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)「性風俗世界を通じたアムステルダムの都市的“性”様式に関する調査研究」について SPD研究発表会での個別面談において主任研究員からは、可能であればアムステルダムで、性労働者や元性労働者に対するインタビュー調査に加えて、性労働者の住居で重点的に参与観察を行ってはどうかと助言を受けた。そこで、平成27年度の調査を通じて既知となった現役性労働者に対して、平成28年度中に彼女の自宅で共に居住し住み込み調査を行うことができるかという点について可能性を打診し、同意を得た。また今後は、平成27年度に行ったオランダの新聞3紙の収集と分析を発展的に深化させ、アムステルダムでの情報を重点的に扱う新聞やその他媒体(雑誌等)を検討の対象に含めながら調査を継続していく予定である。それにより、アムステルダムという都市の特徴、特異性をより明確に捕捉することができると考えている。 (2)都市的“性”様式のグローバル展開に関する研究について 平成27年度の調査研究とその公表過程において、本研究が目標とする都市的”性”様式のグローバル展開の解明には、より多くの地域を対象とする研究者との連携が欠かせないことを痛感した。そこで今後は、更に国際的研究者とのネットワーク構築に注力していきたいと考えている。現在、平成28年度以降には国際的研究者とセクシュアリティと身体という問題系について検討、分析を行い、平成28年度に英語論集として刊行する予定がある。こうした活動をはじめ、今後も多くの研究者とつながりを構築し、セクシュアリティとジェンダーなどの観点からグローバルシティ研究を再考する人類学的プロジェクトに関して、新たなネットワークを構築していきたい。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] 「コメント2」2016
Author(s)
熊田陽子
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Journal Title
IGS Project Series 2 国際シンポジウム はたして日本研究にとってジェンダー概念は有効なのか?-人類学の視座から改めて問う
Volume: 2
Pages: 35-38
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