2015 Fiscal Year Annual Research Report
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14J06785
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
金 惠リン 北海道大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 集団意思決定 / 集合知 / 社会的学習 / 社会情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、人々はどのような条件の下で集合知を生み出すことができるのかという問いを行動実験によって検討し、集団意思決定場面における人々の振る舞いを社会的学習戦略の違いという観点からモデル化することで、集団意思決定のメカニズムを解明することを目指している。
27年度には、他者の判断情報が参照できる集団意思決定場面において、人々は集合知を生み出すことができるのかという問いを検討するために、北海道大学社会科学実験研究センターの実験室設備を用いて、Paul Sabatier UniversityのBertrand Jaylesらと共に実験(n=150)を実施した。具体的に、本実験では、各個人が社会学習することができる意思決定場面(順次に正解がある質問に回答する課題)を設定し、人々がどのような条件の下で、高いパフォーマンスを達成することができるかを実験により検討した。この国際共同研究で得られた結果は、学会、研究会、投稿論文等で発表する予定である。なお、第19回実験社会科学カンファレンスと日本人間行動進化学会第8回大会において、選択課題と推定課題のそれぞれにおいて、議論によって集団のパフォーマンスがどのように変化するかを検討した研究の成果を発表した。結果から、課題の種類によって、対面的相互作用での社会的な影響プロセスが異なる可能性が示唆される。また、国際学会(EHBEA 2016)において、他者の判断が参照できる意思決定場面で人々は集合知を生むことができるのかを行動実験により検討した研究の成果を発表した。この発表は、構造的要因に基づき、人々が社会学習戦略を変容させる可能性を示唆するものである。また、「情動と意思決定」という朝倉書店から出版された本に、情報カスケードの概念に関する研究を、コラムという形で執筆した。現在、集団場面での協力と役割可塑性を検討した実験研究の論文執筆を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
27年度には、集団意思決定場面における社会的情報と集合知の関係を検討する行動実験および国際共同研究を実施し、その研究成果を国内および国際学会において発表した。その他にも情報カスケードについて考察した研究内容を、コラム(集団行動と情動.朝倉書店)という形で公刊した。現在は集団場面での協力と役割可塑性を検討した実験研究に基づいて学術論文を執筆している。これらの活動に加えて、人々が互いの意思決定を参照できるインタラクティブな状況における社会学習過程を検討するために、インターネット上の通信プロトコルを利用したゲーム実験プラットフォーム開発の準備を進めている。総合的に検討して、順調に研究が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目、2年目に行った行動実験で得られた結果を元にして、集団の意思決定場面における社会的相互作用や社会構造が及ぼす影響についての理論モデル構築に着手する。また、集団意思決定場面が持つ構造的要因と個人の戦略的行動との相互作用をより大規模な集団で検討するために、インターネット上の通信プロトコルを利用したゲーム実験プラットフォーム開発の準備を進め、実験パラダイムを拡張させる。今後、それまでの研究成果をまとめ、投稿論文および博士論文を執筆する。
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