2014 Fiscal Year Annual Research Report
ゲーム理論的学習に基づく分散協調型エネルギー管理システム構築に関する研究
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14J06813
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
和佐 泰明 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ゲーム理論 / 協調制御 / エネルギー管理システム |
Outline of Annual Research Achievements |
分散協調型エネルギー管理システム構築に向けた研究に従事し、平成26年度は2つの課題に対する成果が得られた。 まず、ゲーム理論的協調制御の理論体系の拡張として新たなゲーム理論的学習アルゴリズムの提案を行った。提案アルゴリズムは、探索行動と開拓行動を確率的に混合する既存のアルゴリズムに対し、制限された行動選択の中で非合理的行動を一定の確率で選択することを考慮している。この状況下で各意思決定者に提案アルゴリズムを適用すると、意思決定者の行動全体集合が全体最適な均衡解へ任意の確率で収束することを理論的に証明した。また、低慰安手法の有効性をシミュレーションにより検証した。本研究の成果は国際学術雑誌論文としてまとめ上げ、採択・掲載されている点からその価値が学術的に認められている。 つぎに、経済給電問題を定式化する際にネットワークの構成要素の動的モデルの特性を把握することは重要な要素である。特に、電力需給側の構成要素の一つとしてデータセンタの詳細な動的モデルの同定を行った。データセンタでは空調制御によるサーバラック吸気面温度の低温度管理の実現が求められている。一方、リアルタイムで取得できる豊富なセンサ情報を直接利用して動的モデルを導出することが困難である。この課題を解決するために、主に情報理論で利用されている相互情報量とよばれる指標を利用して適度な情報圧縮を行うことで、大規模かつ詳細な動的モデルを導出する手法を提案した。この提案手法はデータ取得時の環境設定を陽に必要とせず、センサ間の構造を保ちつつ体系的に情報圧縮を行えることが利点である。最後に、実際のデータを用いて有効性を示した。本成果は制御分野で最高峰の国際学会の会議論文に採択され、優秀学生論文賞を受賞していることから、新規性かつ国際的に価値のある研究成果として評価されていると客観的に考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分散協調型エネルギー管理システム構築に関する諸課題への成果は発展途上にあり、国際的にも十分な成果がいまだ得られていない最先端の課題である。その諸課題の一部である本年度の課題(I)ゲーム理論的協調制御の理論体系の拡張と(II)経済給電問題のゲーム理論的定式化に関して一定の成果は得られている。ただし、それらは限定的であり各課題のすべてを達成したとは言い切れない。一方、これらの課題の解決は社会的価値が十分に高く、システム制御分野でも国際的に新規性が強く、国内では類を見ないものである。この観点においても先の成果の意義は非常に大きいと考えている。研究計画と比較すると多少の遅れが生じているが、世界でもまだ充実した成果が得られていない領域に対して直面する問題を一つずつ解決して成果を挙げ続けていることに関しては十分な成果として評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、まず前年度で十分な成果が得られなかった定式化を意識しながら、最終目標であるすべての課題を統合的に記述するゲーム理論的問題の定式化を優先的に取り組む。また、この課題に並行して採用第2年度までに行う予定である経済給電問題、最適電力潮流問題、無効電力配分問題の各課題に関してゲーム理論的定式化を目指す。統合システムでは多目的制御における重要な指標として時間的スケールに基づく階層化により各目的を実現することができると考えられ、上記要素課題における成果は階層システム構造の部分問題とその解決策として組み込むことができると期待する。
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Research Products
(4 results)