2014 Fiscal Year Annual Research Report
農山村の空き家をめぐるモノ-人関係の変容と地域定住の再編に関する社会学的研究
Project/Area Number |
14J07003
|
Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
芦田 裕介 甲南女子大学, 人文科学総合研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | 空き家 / 農山村 / 社会学 / モノ / 地域定住 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、農山村における空き家を対象として、住む場所と人の関係を考慮した上で、住宅というモノをめぐる諸アクターの実践や交渉に注目し、空き家をめぐるモノ-人関係の変容を明らかにし、地域定住の再編について考察することである。 今年度は、国内での資料調査と農山村におけるフィールドワークから、日本社会における空き家をめぐる動向の把握に取り組んだ。同時に、国内外の関連する研究動向の検討から、空き家研究のフレームワークの構築を行った。 国内外のモノ研究や住宅研究に関する文献や空き家関連の各種資料を収集した。また、空き家に関する各種の統計や法令、新聞や雑誌等での言説を収集した。文献資料の検討を通じて、モノ(技術)と人の関係を基点として拡がる多様なアクター間の関係を把握し、地域社会の再生産システムを分析する視角を精緻化した。これらの成果の一部は、学術誌への論文掲載や国際学会での報告などで発表した。 各フィールドでの調査では、行政、空き家の管理者、地域住民、NPOなどさまざまなアクターに聞き取り調査を行った。和歌山県高野町周辺の調査からは、地域社会への適応や雇用の問題から、定住者を確保するのが難しい現状が明らかになった。他方で、住民への聞き取りからは、「空き家」をめぐる認識が行政の定義とずれていることがわかった。隣接する紀美野町では、廃校を活用し、地域づくりの拠点となっている専修学校も調査した。京都府綾部市の調査では、行政と地域住民が連携して移住希望者のサポートを行い、これらの要因が移住者の増加と定着に貢献していることが明らかになった。岡山県高梁市周辺の調査で明らかになったのは、空き家は従来の生活の痕跡を消し去らないと利活用できないということである。つまり私的空間において他者をどこまで許容できるかが、空き家の維持・管理や利活用に影響を及ぼすと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本の空き家をめぐる動向を把握し、研究のためのフレームワークを構築できた。調査地でのフィールドワークにおいては、さまざまなアクターの協力を得て、必要な調査データを収集できた。以上より、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は「空き家等対策の推進に関する特別措置法案」が、農山村の空き家対策にも影響を及ぼすと考えられるため、こうした政策の動きを踏まえて研究を進める必要がある。研究のためのフレームワークについても精緻化する必要があるため、引き続き関連分野の文献を収集し、検討を行う予定である。 空き家所有者の追跡調査は不十分であり、次年度の課題である。ただし追跡調査も可能な限り行うが、実際のデータ収集には限界や制約が大きいため、基本的には空き家のある地域の住民に対する聞き取り調査に重点を置いて研究を進める。 各フィールドにおいて、空き家に関わる行政文書や住民の生活記録等の史料を閲覧・複写している。次年度以降は、必要に応じて追加の資料調査を行った上で、これらのデータを整理し、聞き取り調査のデータと合わせて、地域ごとの歴史的文脈を踏まえた空き家の意味づけや活用のあり方を把握・分析していく。その成果は、学会報告や論文のかたちで発表していく予定である。
|
Research Products
(4 results)