2014 Fiscal Year Annual Research Report
SOCS3欠損脂肪組織マクロファージによる肥満抑制メカニズムの解明
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14J07006
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
近藤 泰介 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 免疫記憶 / 自己免疫疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫記憶は獲得免疫機構の根幹をなす機能である。メモリーT細胞には、エフェクターメモリー T細胞 (TEM)とセントラルメモリー)T細胞 (TCM) の2つの集団が存在する。 近年新規メモリーT細胞である「ステムセルメモリー T細胞 (TSCM)」が発見された。TSCMはナイーブ T細胞と同様の細胞表面マーカーを示し、長命で自己増殖能を有する。TSCMは免疫記憶の中枢を担う一方で、自己免疫疾患の再発の原因であると考えられている。私はマウスCD4陽性TSCMの特定とその分化メカニズムの解明を行った。 まずTCR刺激によってT細胞を活性化した後に、Notchリガンドを発現する細胞の共培養を行う実験系を確立した。この実験系は、活性化したT細胞にNotchシグナルを入れることが出来る。活性化T細胞の一部はナイーブ T細胞様(naive-like)T細胞へ分化した。in vitroにおいてnaive-like T細胞はTCR刺激に早い応答性を示した。in vivoにおいて、naive-like T細胞は大量にサイトカインを産生するエフェクターT細胞へと分化し、長寿で高い自己増殖能を有していた。これらの結果はNotchシグナルがTSCMを誘導することを示唆している。 また多発性硬化症のモデルであるEAE マウスの樹状細胞はNotchリガンドであるDelta-like1の発現が上昇していた。EAEマウスのナイーブT細胞集団とNotchリガンドを発現している樹状細胞の共培養を行ったところ、一部の細胞で自己増殖が見られた。つまりEAEマウスのナイーブ T細胞集団には、メモリーT細胞が含まれることを示唆している。 以上の結果から私は学術振興会特別研究員採用第1年度目において、NotchシグナルがTSCMを誘導し、自己免疫疾患モデルにおいてもTSCMが存在することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初SOCS3とNKT細胞と肥満との関連を調べる研究に従事していたが、T細胞メモリーが炎症と肥満に関係すると考えて人工的にメモリーT細胞を作製する研究にプロジェクトをシフトした。その結果、Notchリガンドを発現する細胞であるOP9-DL1と活性化したT細胞を共培養することで幹細胞の性質をもつメモリーT細胞であるステムセルメモリーT細胞(Tscm)を誘導できることを発見した。現在マウスの生体内でこのような細胞は特定できていないが、人工的に大量にTscmを誘導することで、Tscmの機能や誘導メカニズムが今後ますます明らかになっていくだろう。またこの研究はワクチン開発や抗腫瘍免疫に大きなインパクトを与えるに違いない。さらに自己免疫疾患の寛解再発の原因解明に大いなる成果をもたらすだろう。思いがけず新方向に向かったが、非常に興味深い結果を見出しており予想以上の進展があったと評価できる。当初の研究計画に比べて、今後の発展性がより高い研究を遂行できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初はSOCS3と肥満、脂肪組織炎症の研究に従事していたが、脂肪組織炎症においてメモリーT細胞の関与が重要であるとの報告から、人工的に組織特異的なメモリーT細胞の作製を行う研究テーマへシフトした。その結果Notchシグナルを用いることで、Stem cell様の性質を持つメモリーT細胞の誘導方法を確立できた。今後はこのStem cell様メモリーT細胞(Tscm)の機能解析、分化メカニズムの解明、疾患との関連性についての研究を遂行していく予定である。 採用第1年度は、Tscmの誘導系の確立、およびTscmが他のメモリーT細胞に比べてStem cell様の特徴を有しており、免疫記憶の根幹を担うことを解明した。採用第2年度は、まずNotchシグナルがT細胞にどのよなメカニズムでStemnessを与えているのか、シグナル分子レベルでの解析を行い、Tscmの誘導メカニズムをより詳細に明らかにする。具体的には文献または網羅的解析を用いて、Notchシグナルの候補下流分子を絞り込む。さらに候補下流分子を活性化T細胞に強制発現することで、Notchシグナルをバイパス可能かどうか検証を行う。 さらに疾患モデルにおいて生理学的に誘導されたTscmの特定を行う。まずNotchシグナルを活性化T細胞に与える相手側の細胞を特定し、活性化T細胞を移入することでin vivoにおいてTscmの誘導を試みる。続いて生体内のどの組織で分化誘導が行われているか、病理組織学的解析を組み合わせてより詳細に解明する。in vivoで誘導されたTscmを単離し、他の個体に移植しても疾患を誘導できるか合わせて検証していく。さらにマイクロアレイ解析を用いて、マウスでは未だ特定されていないTscmのマーカー分子を探索する予定である。
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Research Products
(3 results)