2015 Fiscal Year Annual Research Report
窒化アルミニウムガリウム超格子のコヒーレント成長機構解明とデバイス応用基礎
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14J07117
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金子 光顕 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 窒化物半導体 / 炭化珪素 / 分子線エピタキシ法 / コヒーレント成長 / 格子緩和 / 拡張欠陥 / X線回折 / 散漫散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
X線回折における横方向サテライトピークは、格子不整合系へテロエピタキシャル成長においてミスフィット転位が導入され格子緩和している際、長く伸びたミスフィット転位が周期性をもって界面に局在、配列している場合に観測され、具体的にはAlAs/GaAsやPbSe/PbTe等で報告がある。窒化物半導体のヘテロエピではサファイアやSiといった格子不整合が非常に大きい基板を使用するため、数nm成長した時点で格子緩和が急速に進行する。このとき、ミスフィット転位は界面に局在せず、成長層には非常に高密度の貫通転位が含まれてしまう。一方、ステップ高さ制御SiC基板上に成長したAlN層のU字ハーフループの底辺はAlN/SiC界面に存在するため、局在したミスフィット転位とみなせる可能性がある。その場合、他材料系で見られた横方向サテライトピークが観測されるのではないかと考えた。 AlN(0002)対称面近傍の逆格子空間マッピングを行った。X線の入射方向は基板のオフ方向と平行である。qx方向(横方向、面内方向)にサテライトピークが±4次まで観測された。ピーク間隔から求めた実空間での周期は1.0 μmとなり、原子間力顕微鏡で求めた基板のステップ間隔と良く一致した。また、qx方向のサテライトピーク間隔はX線入射方向により変化し、入射方向が基板オフ方向と垂直になった際に消失した。これはオフ方向に周期的な歪み場が存在していることを示している。以上より、qx方向に観測されたサテライトピークはSiC基板のステップ端に沿って存在するハーフループのミスフィット成分を反映していた横方向サテライトピークであると結論づけた。 今回得られた成果によりAlN層中の特異な転位分布の理解が進み、今後の高品質化に寄与すると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は研究目的(1)SiC基板上のAlN層およびAlN/GaN超格子の臨界膜厚モデル構築を進めた。基板ステップ端に導入されたミスフィット転位の存在をX線回折により立証した。このことから、成長したAlN層は厳密にはコヒーレント成長しておらず、既存の臨界膜厚モデルの適用が困難であり、ミスフィット転位による弾性エネルギーの緩和を考慮した臨界膜厚モデルの必要性を明らかにした。 (1)の目的達成に向け、順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
横方向サテライトピークの観測は、基板のステップによりミスフィット転位の導入を制御、かつ界面に局在させる可能性を示すものである。そこで、オフ角を積極的に導入することで、より歪みを緩和したAlN層の成長が可能になると考えられる。より大きな平均GaNモル分率のAlN/GaN超格子のコヒーレント成長実現に向け、今後歪み緩和AlN層の成長を目指す。
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Research Products
(9 results)