2015 Fiscal Year Annual Research Report
多重惑星系における軌道進化の観測的・理論的解明とその物質輸送過程への示唆
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14J07182
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
増田 賢人 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 太陽系外惑星 / トランジット / ケプラー宇宙望遠鏡 / スピン軌道角 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽とは別の恒星の周囲の惑星系(系外惑星系)においては、太陽系とは異なり、惑星の公転と中心星の自転の方向が必ずしも揃っていないことが知られている。この事実は、これらの特徴を示す系外惑星系が太陽系とは異なる形成・進化の過程を辿ったことを示唆するものであり、したがってその要因の解明は一般の惑星系を理解するうえで重要である。その一方で、中心星の自転と惑星の公転の向きの関係の測定は、技術的な理由からこれまで一部のタイプの惑星(太陽系の惑星と比較して中心星に非常に近く、木星ほどのサイズを持つホットジュピターと呼ばれるタイプの惑星)に限られていた。そのため、自転と公転のずれがこれらホットジュピターの特殊性に起因するものなのか、あるいはあらゆる種類の惑星に普遍的な性質なのかは明らかでなかった。そこで今年度は、ケプラー宇宙望遠鏡(惑星が中心星の前を横切る際の減光によって系外惑星を検出することを目的とし、2009年にNASAが打ち上げた衛星)の公開データを用いて、ホットジュピターよりも公転周期の長い(すなわちより太陽系のものと性質が近い)惑星について自転と公転のずれを測定する手法の研究を行った。この手法は、中心星の自転による星表面の明るさの分布の変化(重力減光)を利用するもので、2011年に初めて系外惑星に適用されたものであったが、最近になって他の独立な測定手法と結果が矛盾することが知られていた。我々はこの矛盾が、星表面の明るさの分布を記述するパラメータの不定性を正しく取り入れることで解消されることを示すとともに、その結論の正しさを将来の観測によって確認する方法を示した。この成果は、今後同様の手法を用いて、より多様な惑星系において自転と公転のずれを測定するうえで有用となるものであり、現在同様の手法をホットジュピターよりも公転周期の長い惑星に適用することで、その有用性の実証に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
重力減光を用いた中心星の自転と惑星の公転の向きの関係の測定法を確立したうえで、さらに新たな惑星系に適用してその結果を論文にまとめることができた。また、それに加えて3重連星系の軌道面の決定手法の開拓など、関連する他の課題についても成果を挙げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
系外惑星でみられる中心星自転軸と惑星公転軸のずれが、もし過去の力学的な事象(惑星どうしの重力散乱や、伴星からの摂動など)によるものであれば、中心星の自転のみでなく、複数の惑星の軌道面どうしのずれも観測されるはずである。これまでこのようなずれが直接に測定された例はないが、ずれを示す複数惑星系が存在する間接的な証拠は複数存在する。そこで今後は、これまで確立してきた手法を用いて、複数惑星系における軌道面のずれの探索を行い、系外惑星系における自転と公転のずれが力学相互作用に起因するものであるという直接的な証拠を得ることを目標として研究を進める。
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Research Products
(9 results)