2014 Fiscal Year Annual Research Report
高校交換留学経験がその後の社会生活における行動や態度に与える影響
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14J07255
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岩本 綾 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 留学 / 高校 / 留学経験 / 異文化間教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本の高校生が1年間の交換留学経験を通してどのような「できごと」に出会い、そこから何を「学び」、さらにそれはその後の大学生活における実際の行動や態度にどのように活用されているのかを明らかにしようとしている。26年度はまず、25年度に実施した大学4年生13名に対するインタビューの内容を検討した。13名から61個の具体的な「できごと」および「学び」を抽出し、以下の点が明らかになった。 ①留学中に自分が成長したと感じた「できごと」は、「文化間移動にともなう問題」と「青年期の問題」(Furnham & Bochner, 1986)の両者から成っている。 ②上記の「できごと」からの「学び」は、アメリカでの先行研究(Hansel, 1986)とほぼ同様で、「個人の価値観やスキル」「対人関係構築」「異文化知識・感受性」「グローバルイシュー意識」に渡っている。ただし本研究では、机上の勉強以外の「異なる学習方法を知った」という「学び」が抽出されており、これは先行研究で言及されていなかった点であることから、日本人留学生の特徴である可能性がある。 ③留学で得られた61個の「学び」のうち、48個がその後の生活の具体的な場面で活用されていた。 ここまで、リーダーシップ開発論における「一皮むけた経験」研究(金井, 2002など)を参考にしながら、高校交換留学によって得られる経験と学びを整理することができた(上記①②)。今後は、インタビューで語られた「できごと」のコンテクストや「学び」に至った経緯を詳細に検討することで、高校生の留学で期待されるような成果をあげるために重要な要素を明らかにする。これによって、高校留学全般に対する実践的示唆が得られると考えている。 ③については留学経験の「活用」の概念の再検討を進めている。26年度末から追加インタビューを実施している。今後の見通しについては後述する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進行にともない、研究課題を設定し直したり、研究手法の一部を変更したりした。そのため、調査は必ずしも当初計画した通りには実施されていないが、これは、研究発表によりフィードバックを得たことで課題が絞れてきたり、分析を進めた結果研究上の問題点がはっきりしてきたりしたために修正や変更を加えたからであり、研究の停滞とはいえない。大学院の修了要件も順調に満たしつつあり、学位論文の審査と最終試験を除いて博士課程を終えた。全体的に見ると、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は主に以下の2点に取り組む。 1) 高校交換留学時の「できごと」が「学び」に至るプロセスの解明 「できごと」が「学び」に至る過程にはある程度共通する要素があるのではないかと予測しているため、そのプロセスを明らかにしたい。高校交換留学での「学び」のしくみが明らかになれば、これまで高校留学の現場で蓄積されてきたサポートのありかたを、理論的に支えることができる。また、「学び」のしくみに則った留学プログラムを開発することで、留学形態の多様化の中でも留学の質を保証することができると考えられる。 2) 留学経験の「活用」という概念の再検討 これまで、留学経験の「活用」を「留学経験から得たものを帰国後に出会う具体的な場面で実際の行動に移すこと」としてきたが、留学経験の活用促進という研究目的に照らすと、どのような場面での「活用」なのかをさらに絞り込む必要があると思われる。26年度末から始めた追加インタビュー調査は、この点を意識して実施している。当初計画していた質問紙調査は実施せず、27年度も引き続きインタビューデータを収集して、留学中の「できごと」・「学び」とその「活用」の関係を説明するモデルを作成したい。これは、高校留学経験の「活用」を、緩やかな形で長期的に支援していくしくみを構築することに役立つと考えられる。
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Research Products
(1 results)