2015 Fiscal Year Annual Research Report
交錯する<集団歌唱>とその意義-現代モンゴルの日常的歌謡実践をめぐる人類学的研究
Project/Area Number |
14J07305
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
寺尾 萌 首都大学東京, 人文科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
Keywords | 文化人類学 / 歌謡 / 宴 / モンゴル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではモンゴルの婚姻儀礼の宴における<集団歌唱>について調査してきたが、本年度はそれに加え日常生活における祝詞も視野に入れ、言語運用の社会的な在り方と<集団歌唱>とを関連付けて調査を行った。 現地の人々のなかでは、伝統的民俗歌謡が消滅しつつあるという認識が共有されているが、彼らは現代的な大衆歌謡をその代替歌謡として宴を遂行している。しかし現代のモンゴルでは、大衆歌謡のなかでもいくつかの歴史的名曲はすでに古典的歌謡と考えられており、いわば「本物」の宴の歌となりつつあることが明らかになった。 宴やそこで歌われる歌のモードが大きく二つに分けられることも新たに明らかになった。モンゴルの儀礼的酒宴には、盛大に終わりホストとゲストが別れたあとで、双方の親族が「潰れる」まで自由に飲み歌う、宴の第2のモードが存在する。こうした宴は形式に則った正式な宴よりもはるかに多様な様態で実践されており、それぞれが代替不可能なものとして存在する。 これらの点は、非伝統的なものであるがゆえに先行研究において看過されてきたが、現代のモンゴルにおける<集団歌唱>を考えるうえで重要である。報告者は、こうした宴の歌の現代的な状況についてホヴド大学主催の国際学会において報告した。 また、牧民家庭に滞在し、訪れた客との挨拶や、日々の会話の内容などを観察した。季節の挨拶を交わす人々はときどきの状況に合わせて挨拶の仕方を変化させる。形式通りの挨拶では家畜や牧草地が良い状態であることを寿ぐものだが、本調査では、そこで「悪い」とか「良くない」という状況を打ち明ける場を複数確認した。報告者は今後も言語コミュニケーションにおける形式の適用/非適用のあり方とその境界について調査を続けながら、社会的営為としての<集団歌唱>の理念や原理を探究する。
|
Research Progress Status |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Strategy for Future Research Activity |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Research Products
(1 results)