2014 Fiscal Year Annual Research Report
インドネシア・スラウェシ島のファウナの起源-デオキノコムシを用いた生物系統地理-
Project/Area Number |
14J07309
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小川 遼 神戸大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
Keywords | 生物地理学 / 系統分類学 / インドネシア・スラウェシ島 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウォーレシアと呼ばれる東洋区からオーストラリア区への生物地理区移行帯の中心にあるインドネシア・スラウェシ島は、3つの大陸プレート(スンダランド、フィリピン及びオーストラリア)によって形成されたことが明らかになっている。そのため本島は島内に複数の生物地理学的要素を持っており、生物系統地理学の観点から非常に興味深い。本島の生物系統地理については様々な生物群を対象とした研究が行われて来たが、無脊椎動物に関する研究例は少ない。本研究で対象としたデオキノコムシ亜科甲虫は菌類との関連が深いことから森林環境に強く依存し、森林を乗せた大陸移動に伴う分布を示す可能性がある。そのため本亜科は、スラウェシ島の生物多様性の形成史を解明する上で極めて重要な分類群であると考えられる。そこで本研究では、3つの大陸プレート上にある3地域、すなわち北部、南部及び南東部スラウェシで得られた本亜科標本に基づいて形態形質による分類学的再検討を行うとともに、核rRNA 28S遺伝子及びミトコンドリアCOI遺伝子の部分領域の解析から本亜科の系統関係を推定した。さらに、主要属(もしくは属群)の分岐年代を推定して大陸の形成史から島内分布の起源を推測した。その結果、スラウェシ産本亜科の多様性は12属45種に達すること、そしてそれらは東洋区からの大陸移動に伴わない“分散分布”とオーストラリア区からの大陸移動に伴った“分断分布”の両起源によって形成されたことを明らかにした。本研究で得られた成果から博士論文をまとめ、提出した。2015年3月に神戸大学にて博士号を取得した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにスラウェシ島からは7属14種のデオキノコムシ亜科が記載・記録されていたが、形態形質に基づいて再検討したところ多くの属と種が発見され、既知種記録を大きく上回る12属45種に整理できた。加えて、それら全ての分類群を(再)記載し、同定のための検索表を作成した。分子情報に基づいた解析は、属間の系統解析を進化速度の遅い核28S遺伝子に基づいてベイズ法により、種間の系統解析を進化速度の速いミトコンドリアCOI遺伝子に基づいて最尤法により実行し、かつ、分岐年代を核28S遺伝子の系統解析の結果に化石データを重ねて、ベイズ法により推定した。これら研究データを用いて博士論文を作成することができ、研究の進捗状況はおおむね順調である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の予定として、主に以下の2つの計画を実施する。 1. デオキノコムシ類の高次系統のより詳細な解明のため、広範な属のサンプルを集め、さらに精度を高めるために核28S以外で、タンパク質コードCAD、Wingless遺伝子領域を増やし、解析を行う。サンプルは、ニュージーランドのランドケアリサーチ研究所のLeschen博士から提供され、同氏と共同で解析を行う予定である。さらに、オーストラリア区のサンプルを同氏から借用し、スラウェシ産の近縁関係を詳細に推定することに勤める。 2. すでに得られている成果を論文化する予定で、分類学的成果を中心に進める。
|
Research Products
(6 results)