2015 Fiscal Year Annual Research Report
クロマチンタンパク質のユビキチン修飾を介した維持DNAメチル化制御機構の解析
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14J07515
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
山口 留奈 名古屋市立大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | DNAメチル化 / DNA複製 / Dnmt1 / Uhrf1 / Usp7 / ユビキチン / クロマチン |
Outline of Annual Research Achievements |
DNAのメチル化は、エピジェネティック情報の一つとして、細胞固有の遺伝子発現や形質制御に重要であり、個体の正常な発生や細胞の分化に大きく関与する。本研究では、維持メチル化の過程でUhrf1依存的に生じるヒストンH3およびPCNAのユビキチン化/脱ユビキチン化制御の分子機構を明らかにし、細胞の生存に与える影響を明らかにすることを目的とする。 DNAのメチル化パターンはDNA複製を介して親鎖から娘鎖へと正確に継承される必要があり、これを担うのがメチル化酵素Dnmt1である。我々はこれまでにアフリカツメガエル卵を用いた無細胞系での解析により、親鎖のみメチル化したヘミメチル化DNAに特異的に結合するタンパク質、Uhrf1によるH3K23のユビキチン化が、Dnmt1のヘミメチル化部位への集積に重要であることを報告してきた。またDNA複製の完了に伴い、Dnmt1のクロマチンからの解離とともにH3の脱ユビキチン化が起こることが分かっているが、この詳細は不明である。H3の脱ユビキチン化がDnmt1のクロマチンからの解離とともに起こることに注目し、Dnmt1に結合する脱ユビキチン化酵素を質量分析にて探索したところUsp7を同定した。興味深いことに、Usp7を卵抽出液より免疫除去すると、Dnmt1のクロマチン結合の増強およびH3のユビキチン化が認められた。卵抽出液を用いたin vitroアッセイによって、Usp7によるH3の脱ユビキチン化活性については確認をしている。当該年度は、卵抽出液で得られた結果が哺乳類でも起こりうる現象であるかを確認するため主に培養細胞を用いて実験を行った。その結果、ヒト培養細胞においてもDnmt1およびUsp7をノックダウンした際にヒストンH3のユビキチン化が起こることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カエル卵抽出液中で見られた現象がヒトでも保存された現象であるかを検討するためにヒト培養細胞を用いて実験を行った。HeLa細胞において、各種shRNAを用いてノックダウンした細胞からヒストン抽出を行ったところ、カエル卵抽出液同様、Dnmt1またはUsp7のノックダウンによってヒストンH3のユビキチン化が起こることが分かった。またDnmt1およびUsp7を同時にノックダウンすることでH3のユビキチン化はさらに増強することが示された。 またカエル卵抽出液中においてUsp7の阻害剤であるP22077を加えてのメチル化の取り込みを調べたところ、メチル化の取り込みが強く抑制された。この取り込みの抑制がUsp7によるものであるかを確かめるためのレスキュー実験の準備を進めている。また培養細胞内におけるメチル化への影響を調べるための方法についてもいくつか条件検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は脱ユビキチン化とメチル化の関係性を明らかにするために、カエル卵抽出液および哺乳類培養細胞の両方の実験系を用いて解析を進めていく。 カエル卵抽出液では、Usp7を免疫除去した際のメチル化の取り込みが阻害剤を用いた場合と同様に抑制されるかを調べ、このレスキュー実験も行う。 また培養細胞においても各種ノックダウンによるメチル化への影響および細胞増殖への影響について調べていく方針である。培養細胞でメチル化を測定する方法として制限酵素処理やバイサルファイト処理などがあるが、メチル化の変化を効率良くとらえる方法を様々検討しており、今後もこの点においては特に力を入れて実験を進めていく。
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