2014 Fiscal Year Annual Research Report
ストレスが引き起こす社会行動の障害とその背景にある神経ネットワークの解明
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14J07534
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清水 朋子 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 情動行動 / 社会行動 / 内側前頭前皮質 / 扁桃体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はストレスが導く社会行動の障害とその背景にある脳の機能変化を明らかにすることを目的として計画した。そのためにラットを用いたSocial Interaction 実験を行い、ストレス負荷群と対照群において社会行動に伴うラット脳の神経活動を比較することを計画した。Social Interaction 実験(以下SI実験)は同一のフィールドに入った複数のラットが互いに関わりあいながら行う社会行動を観察するものである。 SI実験では複数のラットが関わるために行動が多様である。加えて社会的行動時の脳活動をリアルタイムで計測した実験はこれまでにないことから、データの解析・解釈が困難であった。そこで、解析・解釈の基準となるデータを得るため、ストレスを負荷されていない対照群の脳活動を事前に解析する必要があり、当該年度は主にコントロールデータの取得を行った。具体的な実施内容は次の通りである。 ①単一の個体を対象とした行動実験として、不安水準の評価に用いられる高架式十字迷路テストおよびオープンフィールドテストを行った。申請書に記載した通り、ラット扁桃体に着目し、神経活動記録用電極を挿入した。現在、情動行動に伴うラット扁桃体の神経活動を解析している。 ②扁桃体と密接な線維連絡を持ち、情動発現とその情動に基づく行動決定に関与していると報告されている、内側前頭前皮質に電極を挿入した。そして①と同様の行動実験を行い、ラットの行動および内側前頭前皮質の神経活動を解析した。得られた結果の一部を第37回日本神経科学大会で報告した。 ①②の実験によって、複雑で解釈の困難な社会行動およびそれに伴う神経活動の解析・解釈の基準となるデータを得ることができた。これにより、これまで報告されたことのない、社会行動とそれに伴う神経活動を同時に観察した実験においてより適切な解析を行い、考察を進めることが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ストレスが引き起こす社会行動の障害とその神経基盤の解明をめざし、当該年度は主にコントロールデータの取得に取り組んだ。当初の計画に加えて発展的に追加実験を行ったが、それに伴って2年目に実施予定であった内側前頭前皮質における神経活動の解析を1年目(当該年度)に取り組むこととなった。社会行動の障害とその神経基盤を解明するにあたり、これらの実験で得られたデータは非常に重要で意義のあるものであり、おおむね当初の研究目的に即してデータの取得を行えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では複数のラットが関わる複雑な社会行動を分類しなければならない。加えて社会的行動時の脳活動をリアルタイムで計測した実験はこれまでにないことから、データの解析・解釈が困難であるという問題点があった。そこで、解析・解釈の基準となるデータを得る必要があり、当該年度は主にコントロールデータおよび単一の個体の情動行動に関するデータの取得を行った。得られたデータの一部は既に学会で報告しているが、より詳細な解析を要するデータもある。そのため今後も継続して解析を進め、実施済みの各実験のデータをまとめたうえで学会や論文で発表することを予定している。また今後、本格的に社会行動およびそれに伴う神経活動の解析を行っていくことを予定しているが、当該年度に行った追加実験での結果は社会行動の分類および神経活動の変化に関する考察の参考とすることを想定している。
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Research Products
(1 results)