2014 Fiscal Year Annual Research Report
非線形光散乱顕微鏡を用いた生細胞内のタンパク質構造動態の解明
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14J07559
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
金城 純一 独立行政法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 微小管 / 光第二高調波発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、光第二高調波(SHG)顕微鏡を用いて、微小管とその重合・脱重合ダイナミクスに関連した構造動態を明らかにすることを目指している。研究目的および計画に基づき、平成26年度は以下の様な実験と解析を行った。 (1)再構成系において、微小管のヌクレオチド状態依存的な構造多形性をSHG特性として検出する。 強いSHG信号を得るために、試料は多数の微小管を束化したものを用いた。SHG信号は、分子数の二乗に比例するため、束化される微小管本数の二乗に比例して強大な信号が得られる。タンパク質のSHG特性を決定するパラメータは、3階の極性テンソルであり、微小管のような繊維状構造の場合、対称性により多くの成分がキャンセルアウトされ、最終的に独立な有限値の成分として残るのはd31、d33という2成分である。これらの比d31/d33は、微小管を構成するチューブリン二量体が持つ分極の方向に依存する。この物理量のヒストグラムを解析した結果、GDP型微小管と、GDP-taxol型微小管との間でd31/d33の値に有意差があることが明らかになった。今後、より多種のヌクレオチド状態についても実験と解析を行う。 (2)キネシン結合による構造変化の観察 前述と同様の微小管束化試料を用いて、キネシンが結合することによる構造変化観察の予備的実験を行った。実験方法としては、微小管のヌクレオチド状態をGDP状態に固定し、溶液中に様々な濃度のキネシンを混入し、微小管と結合させた。それぞれの試料に対しSHG測定を行い、d31/d33の統計解析を行った。その結果、あるキネシン濃度において、d31/d33の急激な変化が見られた。次年度ではこれをより定量的に調べ、微小管の構造相転移およびキネシンの協同的作用の様子を明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的の1つは、微小管構造をSHGテンソル解析によって定量化し、種々のヌクレオチド状態間の構造変化を調べることである。平成26年度は、SHG偏光特性の統計量を適切に見積もるために、微小管の束化を行い、効率よくデータを取得するための実験系の確立を行った。その結果として、GDP型、GDP-taxol型の微小管の間で構造状態が異なることが明らかになった。本年度に確立した実験系は堅固であり、高い再現性が見込まれるので、今後、継続して実験および解析を進めることで、研究目的をほぼ達成できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に確立した、束化微小管の実験系を用いて、研究計画に従って、キネシン結合状態での微小管構造の定量化を行い、キネシンと微小管構造の関連性を明らかにする。また、研究計画に従い、微小管の極性判別を行うためのSHG干渉光学系の実装を行う。束化した微小管は、全て極性が揃っており、極性判別のための標準試料として最適であるため、滞り無く研究が進むことが期待される。
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Research Products
(2 results)