2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J07628
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐野 圭 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 宇宙背景放射 / 銀河形成 / 銀河拡散光 / 星間ダスト |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度に引き続き、COBE衛星に搭載された観測装置Diffuse Infrared Background Experiment (DIRBE)の全天マップを用いて近赤外線の宇宙背景放射と銀河拡散光の研究を行った。その目的は今まで無視されてきた成分である銀河拡散光を評価した上で、宇宙背景放射を再測定することである。近赤外線の1.25、2.2μmの波長において、Two Micron All-Sky Survey (2MASS)のデータを用いて星光を正確に評価した結果、高銀緯領域で銀河拡散光が検出された。これは以前のDIRBEチームの解析では得られなかった成果である。また、宇宙背景放射の輝度は既知の銀河の積算光の数倍に達し、謎の放射成分の存在を示唆する。この結果をSano et al. 2015, ApJ, 811, 77として出版した。また、3.5、4.9μmの波長域ではWide-field Infrared Survey Explorer (WISE)によって得られた全天の星のデータを用いて星光の寄与を評価した。その結果、高銀緯領域において銀河拡散光が検出され、熱放射に寄与する非常に小さいダストが全ダスト質量に対して数%以上存在することを示した。また、宇宙背景放射の輝度は既知の銀河の積算光と同程度になった。この成果をSano et al. 2016, ApJ, 818, 72として出版した。さらに、1.25、2.2μmにおいて銀河拡散光の銀緯依存性を見出だした。これは星間ダストに前方散乱特性があると生じる現象であり、観測値と星光散乱モデルを比較して得られた前方散乱特性は、従来のダストモデルに比べて大きくなった。その原因として散乱光成分に加えて熱放射成分の存在が示唆される。この結果をSano et al. 2016, 821, L11として出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた近赤外線の宇宙背景放射と銀河拡散光に関する研究は平成27年度までにほぼ達成されており、その成果についての査読付き論文を2編出版した。さらに解析を進めた結果、近赤外線域で銀河拡散光の銀緯依存性を初めて発見し、星間ダストの散乱特性に関して新たな知見をもたらす成果を得た。その成果を3編目の査読付き論文として出版した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度までに申請者が行った研究によって、前景放射を差し引く手法による近赤外線の宇宙背景放射の測定はほぼ尽くされたと考えられるため、同様の研究手法ではこれ以上の研究の進展は望めない状況にある。そこで、宇宙背景放射を測定する新たな手段として、銀河間空間に存在するガスによる吸収線を利用する手法を模索している。これは、宇宙背景放射による銀河間物質の励起状態の変化を観測することにより、宇宙背景放射に制限を与えるという手法である。この手法が完成すると、現在の宇宙における宇宙背景放射の輝度に制限を与えるだけでなく、宇宙の各時代での宇宙背景放射の輝度を制限できる可能性がある。
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Research Products
(10 results)