2014 Fiscal Year Annual Research Report
グリア細胞への迅速な直接誘導法を用いたヒト神経疾患モデルの作成
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14J07658
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
周 智 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | アストロサイト / 直接誘導 / リプログラミング / 分化転換 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、神経疾患において、異常アストロサイトによる細胞非自律的な作用が病態形成の一因になっていることが明らかとなっており、疾患研究および創薬研究には、アストロサイトを用いた疾患モデルの作出および疾患解析が急務である。本研究では、ヒトアストロサイトの迅速な調製を目指した直接誘導法の開発および誘導アストロサイト(iA細胞)を用いた疾患モデルの作出を目的とした。これまでの検討から、アストロサイト誘導因子(AIF)である、AIF1, AIF2, AIF3をヒト皮膚由来線維芽細胞に導入することにより、アストロサイトマーカーであるGFAP陽性細胞(iA細胞)の誘導が可能であることが明らかとなっている。今年度は、ヒトiA細胞がヒト初代培養アストロサイトに類似した遺伝子発現様式を示すこと、および神経成熟促進作用を有する機能的アストロサイトであることを見いだした。さらに、FACSを用いたヒトiA細胞純化法を見いだすことができた。また、ヒトiPS細胞および神経幹細胞(lt-NES)にAIF1-3を導入することにより、迅速かつ高効率でiA細胞を誘導可能であることを見出した。 次に、GFAP遺伝子の変異が原因となる、アレクサンダー病(ALX)の試験管内疾患モデル作出を試みた。モデル作出にあたり、細胞の遺伝的背景の相違による影響を排除するために、ヒトlt-NES細胞に対し、CRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集を行った。対照細胞および変異導入細胞からiA細胞へ誘導したところ、GFAP遺伝子に変異を有するiA細胞において、低分子量熱ショックタンパク質であるαB-Crystallin陽性細胞数が有意に増加すること、およびGFAPタンパク質が細胞内において凝集体を形成することを見いだした。これらの結果から、iA細胞を用いることにより、アストロサイト関連疾患の表現型を再現可能であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト線維芽細胞由来iA細胞の遺伝子発現および機能性について検討することができ、iA細胞純化のための方法を見出した。また、線維芽細胞以外の細胞種からも同様の手法によりiA細胞の誘導が可能であり、試験管内疾患モデルの作出もおこなうことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、ALX病以外のアストロサイト関連疾患の試験管内モデル作出について検討を行う。また、作出した試験管内モデルに神経細胞も採用し、グリア細胞の神経細胞に対する細胞非自律的な作用について検討を行う。これらの検討と並行し、iA細胞への誘導効率を規定する細胞内のバリア機構の解析を行う。
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