2014 Fiscal Year Annual Research Report
微小貝におけるハビタット選好性と分散能力の関係の解明
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14J07775
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
和田 慎一郎 独立行政法人森林総合研究所, 野生動物研究領域, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 種分化 / 受動的分散 / 陸産貝類 / 小笠原諸島 |
Outline of Annual Research Achievements |
小笠原諸島に生息する微小陸貝のノミガイ類について、詳細なハビタット利用や分布の状況を把握するために野外調査をおこなった。地図上にて母島を400m×400mのメッシュで区切り、実際に踏査して1メッシュにつき1地点の調査地点を設け、島をほぼ網羅する120地点でノミガイ類の生態調査を実施した。その結果、例えばトウガタノミガイ属の未記載種Aは小笠原固有植物のタコノキの葉の付け根部分に多く、同属の未記載種Bはモクタチやヤロードなどの広葉樹木の幹や枝部分を好む、といった傾向がみられた。また同属の未記載種Cについては石灰岩の表面からしか見つからず、石灰岩への高い依存性が確認された。さらに各種の分布状況と照らし合わせると、上述の未記載種Cのような特定の環境への依存性を示す種だけでなく、完全に依存していなくても、ある程度生息環境に対しての選好性を示す種では生息域が狭い(分布するメッシュ数が少ない)という傾向がみられた。また、野外調査でみつかった陸貝の一部をサンプルとして収集し、遺伝子を用いて予備的な分子系統推定をおこなったところ、広域に分布する種と比較して、上述の未記載種のように特定の生息環境への依存性や選好性を示す種は島内でも遺伝的な分化がより進んでいる傾向がみられた。以上の成果は、微小陸貝の微細な生息環境の違いによって、分布の制限や遺伝的分化を引き起こされていることを示唆している。陸貝のように移動力の低い動物は受動的な手段によって長距離を移動すると考えられ、生息環境の違いと多様化に関わる分散力の関係を解明することは、島嶼の生物相の成り立ちを理解する上で重要である。一方、季節や年ごとの気候や過去に開墾されたか否かが現在の陸貝の個体数や分布に影響を与えている可能性もあるため、今後は継続調査および土地利用調査をおこなっていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新環境に移り、これまでと異なる体制に慣れるのに手間取ったが、受入研究者らのサポートのおかげで研究に専念することができた。また野外調査では天候等に左右され工程に狂いが生じることもあったが、研究遂行費を利用することで問題なく対応できた。
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Strategy for Future Research Activity |
継続して野外調査をおこないデータを収集する。同時に分子実験についても進め、対象陸貝の詳細な集団構造を解析して仮説の検証をおこなうことで研究を推進する。得られた成果については、随時学会発表や論文などで公表する。
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Research Products
(2 results)