2014 Fiscal Year Annual Research Report
軟X線分光による固液界面構造の局所電子状態解析法の開発
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14J07798
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
湯澤 勇人 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 固-液界面 / 軟X線吸収分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
固液界面のその場観察は,測定プローブと固体,液体の二つの凝縮相との相互作用が大きいために困難である.そこで本研究では透過型の軟X線吸収分光において厚みを制御できる液体セルを用いて固-液界面観察を確立させることを目的としている.本年度は液体セルの内壁を単分子層で化学修飾し,その内部を液体で満たすことで形成されるモデル固-液界面の測定を検討した. 実験に使用したモデル界面は,液体セルを構成するSiNメンブレンの内壁に金を蒸着したものにチオール化合物を単分子層吸着させ,セル内部に液体を満たすことで作成した. 単分子層にH,1H,2H,2H-パーフルオロデカンチオールを用い,液相に水またはベンゼンを用いて炭素K殻吸収スペクトルを測定した.その結果,どちらの液相を用いても単分子層のC-F結合のσ*への励起,およびC-C結合のσ*への励起に対応する吸収が得られ,界面における単分子層のスペクトルが測定可能であることが分かった.また,これらの吸収は液相の違いによる影響を受けないため,単分子層-液相分子間の相互作用の変化が単分子層の炭素原子の電子状態に与える影響は非常に小さいと考えられた. 一方,上記の単分子層修飾をした液体セルとしていないものについてベンゼンの炭素K殻吸収スペクトルを比較したところ,ベンゼンのπ*励起吸収は単分子修飾した液体セルの場合の方がブロードになった.芳香環とF原子の相互作用はこれまでに-F…H-による相互作用や-F…π相互作用が報告されている.したがって修飾メンブレンの使用による吸収のブロード化はこれらの相互作用による影響を反映しているものと予想された.このように,透過型の軟X線XAS測定によって固-液界面の相互作用が議論できる可能性を示すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り,単分子層修飾を施した固体-液体間の相互作用が軟X線吸収分光により検出できる可能性を示すことができたため概ね予定通り研究が進行していると考えている.ただし次の段階として様々な単分子層でスクリーングを行ったところ,軟X線照射により想定外に早く多くの単分子層で分解反応が進行してしまうため現状では幅広いスクリーニングが難しいことが分かった.したがって当初の計画以上と言えるほど成果を上げることはできなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
単分子層修飾を施した固体-液体間の相互作用が軟X線吸収分光により検出できる可能性を示すことができたが,多くの単分子層は軟X線による分解反応が進行するために単分子層のスクリーニングを行うことが現状では困難であることが分かった.そこで現在単分子層修飾ナノ粒子懸濁系において同様の検討を行うことを検討している.単分子層修飾ナノ粒子懸濁系であれば常にサンプルを循環させることが出来るので分解が起こっても新たなサンプルと常に交換されるので,大きな問題にはならない.そこでこの系における測定手法を完成させるためにまず修飾なしのナノ粒子懸濁液の固-液界面測定法を確立させる.その後修飾ナノ粒子の相互作用を検討する計画である.
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Research Products
(6 results)