2014 Fiscal Year Annual Research Report
太平洋のロシア:外交における中国中心主義からの脱却とアジア諸国への影響
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14J07829
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
加藤 美保子 慶應義塾大学, 法学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ロシア外交 / アジア太平洋地域 / ベトナム / 戦略的パートナーシップ / 多国間主義 / 国際関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ロシアのプーチン政権が目指すアジア太平洋諸国との政治経済関係の「多角化」の方向性と実態を明らかにするため、中露関係の動向を把握する一方、この地域における紛争や領土問題を考察するうえで地政学的に重要な位置を占める日本、北朝鮮・韓国、ベトナムとの関係を検討することを目的としている。 平成26年度は主にロシアとベトナムの関係に焦点を当て、戦略的パートナーシップ締結(2001年)の背景と、2000年から2014年までのロシアとベトナムの政治、経済、軍事技術分野の協力の質的変化について検討した。初年度であるため、モスクワのASEAN研究の中心であるモスクワ国際関係大学ASEANセンターとロシア科学アカデミー極東研究所ベトナム・ASEAN研究センターを訪問し、ロシア側の研究状況の聞き取り調査を行い、今後の調査活動の基盤作りに力を入れた。 これらの成果は、ロシア科学アカデミー極東研究所ベトナム・ASEAN研究センターが発行している学術雑誌「ベトナム研究(Вьетнамские Исследования)」に投稿した。過去1-2年間の報道では、ロシアとベトナムの関係は中国の南シナ海進出を意識した軍事分野の協力拡大にのみ注目されてきたが、拙著ではより長期的な視野に立って経済・貿易・軍事、それぞれの分野の協力内容を検討した。2010年以降のベトナムとの関係刷新は、同国を含む東南アジア地域でのプレゼンス拡大という大国主義的な動機だけでなく、ソ連時代の遺産としての経済資源を最大限に活用して、外貨獲得とアジアでの貿易・ビジネス関係の拡大を進めようという実利的な目的に基づいている点を指摘した。 この他、本研究の下敷きである博士論文(平成23年9月学位授与)の加筆、修正作業を行い、『アジア・太平洋のロシアー冷戦後国際秩序の模索と多国間主義』として出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述の研究目的に照らし合わせて、三年間で以下の三つの課題に取り組む計画である。 ①ロシアの軍事・外交政策における北極および極東海域の優先度の高まりと日露関係への影響 ②ロシアとベトナムの戦略的パートナーシップ:米中/中ロ関係の影響を考慮に入れて ③アジア外交における実利主義:朝鮮半島政策を事例に 当初の計画とは順番が変わったが、平成26年度はモスクワでの調査の目処がついたため、②を先に取り上げ、ロシア語で論文をまとめた。また、本研究課題の申請時には予定していなかった単著の出版も実現した。以上から、本年度は計画以上に成果を出せたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の成果をもとに、研究目的を達成するために上記①~③の課題について次のように研究を進めて行く。 1)平成27年8月に予定されている国際中欧・東欧研究協議会世界大会では、課題①と②についてイギリス、韓国、日本の研究者とパネルを組み研究報告を行う予定である。この英語報告をもとに、英文査読誌への投稿を目指す。 2)前年度に引き続き、とくに課題①と③について海外調査や国際学会での活動も視野に入れ、日本および海外の専門家の知見に基づいて関連情報・資料の収集を行う。 3)収集したを情報を整理・検討し課題①~③について総括し、日本語および英語で研究報告を行い、それらの成果を英文査読誌に発表することを目指す。
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Research Products
(2 results)